1980~′88年にわたり, 静岡県沼津市西浦久連の山田寿太郎氏園に栽培されている‘Zutano’, ‘Bacon’およびFuerte′を用いて, 結実習性や収量構成要因について調査した.
1. 果実は3品種とも6月下旬から8月中旬にかけて急速に肥大し, その後は8月中旬よりゆるやかとなるS字型生長曲線を示した. 種子の生長は6~10月までみられ, 11月以降は緩慢となった.
2. 落花(果)には3品種ともに二つの波相がみられた. 第1次波は大部分が花で落下し, 5月上旬から6月上旬まで, 第2次波は幼果で落下し, 5月下旬から7月下旬であった. 花に比べて幼果の落下数は少なかった.
3. 枝の伸長は1番枝, 2番枝ともに5月中旬から急速に行われ, 6月下旬以降は緩慢となった.
4. 落葉波相には二つの山がみられ, 第1次波は5月中旬から6月中旬に, 第2次波は8月中旬から9月下旬であった.
5. 花房は無限花序と有限花序に分かれ, その比率は‘Zutano’では無限花序が高く, ‘Bacon’や‘Fuerte’では隔年または2年ごとにそれらが交互に変化した.
6. 結果部位を8型に分類した. 3品種とも発育枝に生ずる枝と着花枝に生ずる枝は, 隔年ごとに交互に入れ代わって結実を繰り返した. 枝の種類では夏枝や1番枝の結実分布比率が高く, 結果母枝では頂芽や第2節の比率が高かった.
7. 全開花数に対する結実比率は0.038%以下であったが, ‘Fuerte’, ‘Zutano’, ‘Bacon’の順に高かった. 収量は隔年ごとに異なり, とくに, 低温の年は結実数および収量が少なく, 果実も小さかった.
8. 花芽は1~2月の最低気温(-2.5°~-3.5°C)の遭遇時間が長くなるほど枯死するものが多かった.
9. わが国のアボカド栽培の障害は, 厳寒期の最低気温と開花時の低温であり, その対策としては栽培地の選択, 耐寒性品種と台木の選抜•育成が重要と考えられる.