園芸学会雑誌
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採取熟度別モモ果実の追熟に伴う揮発性成分の変化
垣内 典夫大宮 あけみ
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1991 年 60 巻 1 号 p. 209-216

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抄録

モモ果実の追熟に伴う揮発性成分の挙動とそれに基づく採取適期を明らかにするため, 熟度の異なる3段階の果実を採取し, 追熟前後における揮発性成分組成の変動について, その他の品質要因との関連において調査した.
1.未熟果 (Hard mature), 硬熟果 (Firmmature), および軟熟果 (Soft mature) を採取し, 室温で4日間追熟したところ, 色調, 硬度, 糖度, 酸度および風味は軟熱果のそれ以外は可食適期であった. しかし, 軟熟果はやや過熟状態となった.
2.モモの香気成分として, キャピラリーガスクロマトグラフィーにより89成分が検出され, そのうち33成分を同定した. 主要成分は, C6アルデヒドとアルコールならびにラクトン類であった.
3.同定した33成分の全揮発性成分は, いずれの採取熟度においても採取直後に多く, 追熟するにつれて減少した. この追熟による全揮発性成分の減少の主な原因は, 量的に多い青臭みを示すC6アルデヒドとアルコール類の減少によることがわかった.
4.モモ果実の芳香の主体をなすラクトン類として,C6~C12に及ぶ11成分が認められた. 完熟果におけるγ-デカラクトンは全ラクトンの約40%を占め, 主要なラクトンであった. これらのラクトン類は熟度の進行に伴い急激に増大し, 芳香の発現に寄与していると考えられた.
5.匂い閾値の評価から熱度の進行に伴う芳香の発現は, 青臭み成分としてのC6アルデヒドとアルコール類の減少に伴って, 芳香を示すラクトン類, 特にγ-デカラクトンなどの急激な増加により引き起こされることが示された.
6.果実採取後, 4日程度の流通を含む追熟期間を考慮したときの揮発性成分の挙動からみた採取適期の果実は, 硬熟果であると判定した.

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