抄録
トマト近縁野生種L. peruvianumの持つ低温伸長性を細胞融合法を利用してトマトに導入し, トマトの耐低温性を向上させることを目的として本試験を行った.
L. peruvianumの本葉由来プロトプラストとトマト'ポンデローザ'の子葉由来プロトプラストとをポリエチレングリコール (PEG) 融合液を用いて細胞融合させた. 再分化してきた茎葉の形態により休細胞雑種植物と思われるものを選抜した.
リボゾーマルDNA (rDNA) による分析の結果, 4株が体細胞雑種であることが確認された. 花粉稔性はそれぞれ62.2, 78.3, 36.2, 60.2%で, すべて自殖可能であった.
体細胞雑種の自殖した2系統と, 雑種親である'ポンデローザ'およびL. peruvianumとを温室で育苗後,25°/15°C (明期12時間), 15°/8°C, 15°/4°Cの三つの温度処理を行い, 処理前と2週間後にそれぞれ地上部の新鮮重, 乾物重を測定した. 体細胞雑種系統の相対生長率 (RGR) はトマトとL. peruvianumとの中間またはトマト以上の値を示し, L. peruvianumの持つ低温伸長性が体細胞雑種系統において発現していることが示された.
なお, ウイルス病抵抗性検定の結果, L. peruvianumの持つTMVとTSWVに対する抵抗性は雑種植物に導入されていることが確認された.