園芸学会雑誌
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イチゴ雌ずいの形態と受精能力の開花後の変化
吉田 裕一後藤 丹十郎中條 利明藤目 幸擴
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1991 年 60 巻 2 号 p. 345-351

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抄録

イチゴ (Fragaria×ananassa Duch.) '愛ベリー'と'女峰'を用いて雌ずいの受精能力と形態の開花後の変化について検討した. '愛ベリー'の1番花では開花時において花床頂部の雌ずいは小さく未成熟であり, 受精能力を持たなかった. また, 開花10日後においても受精能力を持たない場合があった. 一方, '愛ベリー'の5番花や'女峰'では花床基部と頂部の雌ずいの発育差は小さく,頂部の雌ずいは開花直後から受精可能であった.
受粉時期を遅らせると, '愛ベリー'1番果の花床頂部の不稔種子は減少した. しかし, 花床基部の雌ずいの受精能力は開花4日後には低下し始め, 開花4日後以降に受粉した場合, 花床基部の種子が不稔となり, 花床基部が肥大不良となった.
以上のように, 受粉時期と期間を調節することによっで'愛ベリー'の奇形果発生は軽減される. しかし, 開花時において花床頂部と基部の雌ずいの発育差の大きい花については, 奇形果発生を完全に防止することは難しく, 花器発育段階においてその発育差を小さくする栽培技術に関する検討が必要であると考えられる.

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