園芸学会雑誌
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体細胞胚形成および不定器官形成によるナス属植物の生体外増殖
Mohammad Ali大久保 敬藤枝 國光
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1991 年 60 巻 3 号 p. 601-612

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抄録
Solanum melongena, S. melongena var. insanumおよびそれらの一代雑種では, 0.5~2.0mg•liter-1の2,4-dichlorophenoxyacetic acid (2,4-D) を添加したMurashige and Skoog (MS) 培地で培養した実生の下胚軸外植体が, 体細胞胚形成能を示した. S. gilo, S. integrifoliumおよびそれらとS. melongenaとの一代雑種では, 2,4-D, indole-3-acetic acid, 3indole -butyric acid, あるいは1-naphthaleneacetic acidを,単独または6-benzylaminopurineと組み合わせたMS培地のいずれにおいても, 下胚軸外植体が体細胞形成カルスを分化しなかった. したがって, S. melongenaの2,4-Dによる体細胞胚形成反応は劣性遺伝子支配か, または異種ゲノムのエピスタシスで抑制される形質と思われる.
一方, 上記のSolanum属植物はいずれも, 下胚軸外植体からの不定芽形成が, ホルモン無添加のMS培地で誘起された. ただし, 体細胞形成能を示した遺伝子型では, 外植体の不定芽形成率が概して低かった.
S. melongenaの体細胞胚形成過程の組織学的調査で, 体細胞胚形成カルスは前胚を形成する前に2次生長することが確かめられ, また体細胞胚の発育が受精胚に似た経過を辿ることが観察された.
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