抄録
カキ5品種 (横野, 葉隠, 倉光, 紋平および平核無) を用いて, アルコール (EtOH) ならびに炭酸ガス(CO2) 処理を行い, 脱渋難易の品種間差異と果肉中のエタノールおよびアセトアルデヒド蓄積との関係を調査した.
EtOH処理は小型プラスティック容器内で, 果重当たりのEtOH量を統一して果実1個ずつ行った. CO2処理は大型デシケータに果実を入れ, CO2を封入して行った. 処理温度はいずれも20°Cとした. また, 各品種の果汁のアセトアルデヒド (アルデヒド) 反応性を30°Cで調査した. EtOH処理中の果肉の軟化の程度は品種によって大きく異なり, なかでも'葉隠'は軟化しやすく,'倉光'は軟化しにくかった. 可溶性タンニン (タンニン)含量の減少パターンも品種によって差があり, EtOH処理では'横野'と'倉光'が'紋平'と'平核無'に比べると脱渋困難であった. CO2処理では'横野'と'葉隠'が脱渋しにくかった. 果汁のEtOH蓄積は, CO2処理では5品種ともほぼ同程度であったが, EtOH処理では'倉光'が明らかに少なかった. アルデヒドの蓄積は, CO2処理では脱渋しやすかった'紋平'と'平核無'で顕著に多く, EtOH処理では脱渋困難であった'横野'と'倉光'で明らかに少なかった. なお, '葉隠'で蓄積が多かったのは果肉の軟化が進んだためであると考えられた. 果汁のアルデヒド反応はむしろ, 脱渋しやすい品種で若干劣る傾向が認められた.
以上のことから, EtOH, CO2処理ともに果肉のタンニン含量の減少とアルデヒドの蓄積が密度に関係していることが明らかであった. すなわち, '紋平'と'平核無がCO2で脱渋しやすかったのは, ほかの3品種に比べてアルデヒドの蓄積が早く, かつ量も多かったことによると考えられた. 一方, '横野'がEtOHで脱渋しにくかったのは, 果実内に取り込まれたEtOHがアルデヒドになりにくいためと思われた. また, '倉光'EtOHで脱渋困難であったのは, EtOHそのものが果実内に取り込まれにくいことに加えて, 果実内でアルデヒドになりにくいことが主な原因であると推察された,