抄録
アントシアニン系花色のテッポウユリの育成を目的として,子房親としてテッポウユリおよびシンテッポウユリと花粉親としてオトメユリおよびササユリとのそれぞれの種間雑種の育成を試みた.
1.胚培養法と花柱切断受粉法を用いることによってテッポウユリ×オトメユリ,シンテッポウユリ×オトメユリ,シンテッポウユリ×ササユリの組合せで種間雑種が得られた.花色は,テッポウユリ×オトメユリの雑種が濃いピン久シンテッポウユリ×オトメユリはやや淡いピンクとなった.シンテッポウユリ×ササユリの雑種は白花であった.
2.テッポウユリ×オトメユリの交雑ではテッポウユリ2品種,2系統を用いたが,結実率に品種間差が見られ,'ジョージア'の結実率が最も高かった.
3.シンテッポウユリは,テッポウユリに比べオトメユリ,ササユリとの交雑した時は高率で結実した.
4.種間雑種の花粉稔性は,大部分の個体で低かったが,シンテッポウユリ×オトメユリの雑種の中で,95.2%と高い花粉稔性を持つ個体があった.この個体の染色体数は2n=48であり,この高花粉稔性は,複二倍体植物の特性によるものである.
5.種間雑種に,オトメユリとテッポウユリの花粉を交配したところ,前者の交配では胚が得られたが,後者の交配では胚が得られなかった.謝辞本稿を草するにあたり,元農水省農業生物資源研究所所長,現全農営農対策部の鳥山国士博士,富山県農業技術センター野菜花き試験場場長の梅原吉廣博士にご校閲載いた.ここに記して感謝の意を表する.