抄録
ブドウ'キャンベル•アーリー'を用いて,満開時にエチクロゼート,エセホンの各50ppmおよびNAC1,200ppmの水溶液を全面処理した.処理後,20~24日に果房の小穂切除を加え,摘粒効果および果実の諸形質について調べた.また,各薬剤による脱粒経過を比較した.
1.エチクロゼート処理により正常果粒数および穂軸1cm当たりの正常果粒数が減少し,小穂切除を加えるとさらに減少した.穂軸1cm当たりの正常果粒数の減少は先端部2~3cmの切除より基部小穂の切除が大きかった.
2.NACおよびエセホン処理においても明らかな摘粒効果を示した.その効果はエチクロゼートが最も大きく,次にNAC,エセホンの順であった.また,小穂切除により正常果粒数はさらに減少した.
3.エチクロゼート処理は小穂切除の有無にかかわらず果粒の肥大を促進する傾向を示したが,NACおよびエセホン処理では肥大効果は認められなかった.また,エチクロゼート,NACおよびエセホン処理は糖度に影響を与えなかったが,酸度はNAC処理で増加し,小穗切除により減少する傾向であった.
4.無処理区の脱粒は処理後9~10日にピークがみられたが,エセホン処理区では処理直後から脱粒が認められ,そのピークは処理後5~6日と最も早かった.NAC処理区は明らかなピークを示さず,処理後5~10日に脱粒がみられた.エチクロゼート処理区の脱粒のピークは処理後5~8日にみちれ,エセホン処理と無処理の中間であった.
5.以上から,エチクロゼートおよびNACの全面散布を行い,年次により摘粒不足とみられる場合に小穂切除を加えることで着粒数をより安定化できるものと思われる.