抄録
実験1においてニホンナシ'二十世紀'の葉芽に0時間から1,450時間までの連続した低温処理を行い,休眠の深さ,CO2排出量および内生生長調節物質を調査した.実験2において2年生の'二十世紀'を10月および11月にガラス室に搬入し加温した.これらと露地においたものの花芽を2月に採取し花芽原基とりん片中の遊離型ABAおよび結合型ABA含量を比較した.
<実験1>1.葉芽の休眠は,低温処理800時間までは深い自発休眠期,800時間から1,350時間までが自発休眠の覚醒期にあたり低温処理1,400時間で自発休眠は打破された.
2.ABA含量は低温処理800時間まで処理時間に比例して滅少した.低温処理1,200時間にジベレリン様物質含量が急激に増加し,その後サイトカイニン様物質,IAAの順に含量が増加した.CO2排出量は1,000時間から次第に,エチレン生成量は1,250時間に急激に増加した.
<実験2>1.花芽原基の両タイプのABAとりん片の結合型ABAは露地区で著しく低かった.
2.りん片の遊離型ABAはどの処理区でも変化はなかった.以上の結果は,ニホンナシの芽の休眠打破は低温に反応しABA含量が低下することが重要であることを示唆している.