抄録
本研究では代表的な果菜類を対象として,窒素の施用量および形態が苗の生育に及ぼす影響を調査し,施用窒素の収支とあわせて適正な窒素施用量および施用形態を検討した.各作物は市販培土に一律に播種し,子葉展開時に3.5号ポリポットに鉢上げして試験を実施した.得られた結果は以下のとおりである.なお,窒素施用量は培土1 liter当たりの施用量で示した.
1.キュウリ,メロン,スイカ,トマトは窒素250mg,ナス,ピーマンは500mgで最も良好な生育を示した.
2.500mg以上の窒素多施用による生育の低下は果菜の種類によって異なり,メロン,キュウリ,ピーマンで大きく,スイカ,トマト,ナスで小さかった.
3.施用窒素のうち,50~100mgの硝酸態窒素が初期から確保された場合に苗の生育は良好であった.また,生育良好な場合の培土飽和浸出液中の硝酸態窒素濃度は育苗期間中ほぼ200ppm前後で推移した.
4.生育良好な場合の施用窒素の収支は,吸収率25~50%,残存率10~25%,未回収率45~50%であり,施用窒素の多くが溶脱などにより未回収となった.5.溶脱などによる施用窒素の損失は育苗開始1週間園芸用育苗培土に関する研究(第2報) 867の間に特に多く,その後の損失は緩やかであった.
以上の結果,培土への窒素施用量は培土1 liter当たり200~300mgが適当であり,この範囲で多くの果菜類に適用できると考えられた.また,施用窒素のうち,スターターとして50~100mg程度の硝酸態窒素の施用が望ましいと考えられた.