抄録
ニホングリとチュウゴクグリ果実の渋皮剥皮性におよぼす要因の検討を行った. その結果, 渋皮剥皮時間は渋皮の水分含有率との問に負の相関 (r=-0.616**),渋皮のAIS含有率との間に正の相関 (r=0.55P**)を示した.
剥皮困難なニホングリは渋皮が厚く, 剥皮の容易なチュウゴクグリは薄く, 渋皮の厚さと渋皮剥皮率との間に負の相関が認められた (r=-0.836*)
渋皮剥皮が容易な時期の渋皮と胚の組織内にはタンニン細胞様細胞は見出せなかった. その後, 渋皮中にタンニン細胞様細胞 (フェノール含有細胞) が形成され, さらに渋皮の剥皮が困難になるにつれて, 渋皮と胚の間にタンニン細胞様細胞が広がり, 果実が落下後,渋皮と胚の組織全面にフェノールが蓄積した.
一方, 渋皮と胚との接触面積と渋皮剥皮性との間には一定の関係は認められなかった.
以上の結果から, 渋皮の接着が強まるのは渋皮と胚の形状変化による結合ではなく, フェノール物質が関与する化学的なプロセスでおこるものと考えられた.