園芸学会雑誌
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61 巻, 1 号
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  • 田中 敬一, 壽 和夫
    1992 年 61 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ニホングリとチュウゴクグリ果実の渋皮剥皮性におよぼす要因の検討を行った. その結果, 渋皮剥皮時間は渋皮の水分含有率との問に負の相関 (r=-0.616**),渋皮のAIS含有率との間に正の相関 (r=0.55P**)を示した.
    剥皮困難なニホングリは渋皮が厚く, 剥皮の容易なチュウゴクグリは薄く, 渋皮の厚さと渋皮剥皮率との間に負の相関が認められた (r=-0.836*)
    渋皮剥皮が容易な時期の渋皮と胚の組織内にはタンニン細胞様細胞は見出せなかった. その後, 渋皮中にタンニン細胞様細胞 (フェノール含有細胞) が形成され, さらに渋皮の剥皮が困難になるにつれて, 渋皮と胚の間にタンニン細胞様細胞が広がり, 果実が落下後,渋皮と胚の組織全面にフェノールが蓄積した.
    一方, 渋皮と胚との接触面積と渋皮剥皮性との間には一定の関係は認められなかった.
    以上の結果から, 渋皮の接着が強まるのは渋皮と胚の形状変化による結合ではなく, フェノール物質が関与する化学的なプロセスでおこるものと考えられた.
  • 泉 秀実, 伊東 卓爾, 吉田 保治
    1992 年 61 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカン'宮本早生'の幼樹を7月から10月にかけて4段階の照度 (自然光の100, 50,20,5%)のもとで栽培した.
    10月の春葉のアスコルビン酸含量とショ糖含量は,自然光下に比べて受光量が少ないほど低くなったが,クロロフィル含量は遮光区の方が高い値を示した. アスコルビン酸は葉肉部の柔細胞中に分布し, 受光量が少ない葉ほど葉肉部全体にわたって密度が低くなることが観察された.
    収穫時の果実品質を比較すると, 自然光の20%の照度では果実の大きさ, 果皮色, フラベドおよび果汁中のアスコルビン酸および糖含量の低下がみられ, 5%区ではこれらの各成分含量はさらに低い値を示した.果汁中の酸含量は逆に遮光区で高い値を示した.
    フラベド中のアスコルビン酸の分布を顕微鏡下で観察すると, 受光量の多い果実ではフラベド部全体の細胞にアスコルビン酸が観察されたが, 20%および5%照度の遮光区ではアルベド部に近づくに従って顕著に少なくなった.
    以上の結果から, 受光量はウンシュウミカンの果実および葉のアスコルビン酸の含量と組織内の分布に大きな影響を与え, 自然光の20%以下の受光量で億明らかに果実品質の低下することが認められた.
  • 鎌田 晶吉
    1992 年 61 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    リンゴ'祝', '紅玉', '国光'の各品種及び指標植物として供試したサクラの開花の早晩 (開花日数として表し,他発休眠に入る頃の2月1日から中心花2分咲きに達した日までの日数をとった.) と気象要因との関係を1963年から1987年の25年間にわたって調査した. 気象要因は気温, 地温, 日照時間, 風力, 初雪日, 消雪日である.
    1.気温については, すべての供試樹の開花日数と4月の平均気温との間にr=+0.592*~-0.831**の相関を示し, さらに2月から4月までの積算温度との間にr=-0.797**~-0.891**の相関を示した.
    2.地温と開花日数の関係については'国光'の深さ100cmの結果を除いて, すべての深さで4月の地温との間には負の相関関係がみられた. また12月, 1月では深さ100cmの地温との間には12月の'祝'を除いて負の相関関係がみられた. 12,1月における深い層での根の呼吸活性が高く, このことと開花日数の間に関連があると推察される.
    3.日照時間, 風力, 初雪日, 消雪日については消雪日と'祝', '紅玉', '国光'の開花日数との間でr=-0, 57*~+0.685**の相関がみられたが, 他の要因との間にはみられなかった.
    4.気象要因中, 開花日数と有意性の高かった2月から4月までの積算温度に100cm地点の1月の地温の要因を加味し, リンゴ各品種の重回帰式を求めた.その結果'祝'ではY=116.630-0.014XI-1.603×2,'紅玉'ではY=120.788-0.012X一2.519×2, '国光'ではY=129.687-0.009×1-4.331×2となった. ただし, Yは開花までの日数, X1は2~4月積算温度, X2は深さ100cmの1月の地温である.
  • 杉山 信男, 塙 里香
    1992 年 61 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    培養液pHを一定に維持した場合のブルーベリーの生育に対する培養液中の窒素形態の影響を明らかにするため, 窒素源をNH4+とNO3-に変え, ラビットアイ•ブルーベリー (供試品種:Tifblue) の挿し木1年生苗を流動培養法によって46日間, 水耕した. 培養液のpHは3,4, または5に自動調節し, 窒素濃度は14ppmとした.
    pH3および4では, 窒素源としてNO3-を用いた場合に比べ, NH4+を用いた場合の方が新茎葉乾物重は大きくなったが, pH5では窒素源による乾物重の差は認められなかった. NH4+を用いた場合にはpH3または4の方がpH5よりも新茎葉乾物重は大きかったが,NO3-を用いた場合には乾物重に対するpHの効果は明らかでなかった. pH5でNH4+を窒素源とした場合には, 新葉の可溶性, アミド態, 遊離NH4+窒素濃度は著しく高まった.根における,これらの窒素成分濃度はpHの影響を受けなかった. 新葉のP/Feの比はpHの上昇とともに高まったが, 窒素形態による影響は受けなかった.
    以上の結果から,ブルーベリーの最適pHは窒素形態によって変化すること,培養液pHが3~4に維持された場合には窒素源としてNO3-よりもNH4+の方が優れていることが明らかとなった.
  • 久保田 尚浩, 工藤 正吾
    1992 年 61 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    モモ果実における渋味の発生要因の解明ならびにその軽減方法の確立を図るための基礎資料を得ることを目的として, 土壌乾燥の時期および程度がコンテナ植えモモ樹における果実のポリフェノール含量とPAL活性に及ほす影響を調査した.
    '武井白鳳'を用いて, 果実発育の第1期, 第2期および第3期に土壌pFを乾燥区では2.3~2.7, 対照区では1.5以下に維持したところ, 乾燥時期が遅いほど成熟が遅れた. 第3期乾燥区では果実が著しく小さく, 屈折計示度が最も高かった. 第3期乾燥区では果実のポリフェノール含量も著しく多かったが, PAL活性には顕著な差がなかった. 共台およびユスラウメ台の'さおとめ'ならびに共台の'山陽水蜜を供試し, 果実発育の第3期に土壌pFを1.5以下, 1.5~2.0,2.0~2.5および2.5以上の4段階に調節したところ, 両品種とも乾燥程度が強いほど果実が小さく, 屈折計示度が高かった. 果実のポリフェノール含量はpF2以上の両乾燥区で多かった. '山陽水蜜'のPAL活性は分光光度計法では認められなかったが, 14C標識基質法では乾燥程度が強いほど高かった.
    以上の結果から, モモ果実の渋味の発生には果実発育第3期の土壌乾燥が密接に関与し, この時期にpFが約2以上になると渋味が発生しやすいと思われた.
  • 竹林 晃男, 片岡 丈彦, 行永 寿二郎
    1992 年 61 巻 1 号 p. 39-47
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    早生ウンシュウミカンは, 経済上の見地から11月中に収穫を終るのが普通であるが, さらに, 樹上に残して品質を向上させる場合があり, このような果実を"樹上完熟果"と呼んでいる.
    1.2月まで樹上に着果させた樹上完熟栽培のウンシュウミカン'宮川早生'果実を水田転換園栽培の果実および同貯蔵果, 無加温ビニルハウス栽培の果実と比較し特徴を明らかにした. さらに, 和歌山県有田地方の評価の高い銘柄産地3か所と一般栽培園1か所で栽培した'向山温州'について比較検討した.
    '宮川早生'の全糖含量は樹上完熟果実およびハウス果実が水田転換園の果実や同貯蔵果より高く, '向山温州'では銘柄産地の果実が一般栽培園の果実より高かった. 糖組成ではショ糖が主体で果糖, ブドウ糖がそれに次ぎ, 全糖含量が多いほど果糖の比率が高い傾向がみられた. 樹上完熟果実およびハウス果実は銘柄産地の糖組成に近かった. 滴定酸量は樹上完熟果実, ハウス果実および一部の銘柄産地の果実で多く, 貯蔵果で少なかった.
    食味検査で高い評価を得た銘柄産地の'向山温州'はアミノ酸総含量が高かった. 一方, '宮川早生'ではハウス果実のアミノ酸総含量が最も高かったが, 樹上完熟果実では低かった.
    2.異なる果樹園での'宮川早生'の樹上完熟栽培では全糖含量が収穫時まで増加し, 11月での差はそのまま2月まで維持された. 上枝成りの大果より下枝成りの小果の全糖含量が多く (11月), さらにその後の蓄積量も多かった. 袋かけにより種々の障害が防止されたが,2重紙袋は全糖含量の低下をもたらした.
    3.樹上完熟栽培は甘味と酸味が強く, 銘柄産地の品質に近い果実を容易に生産できる-方法であると位置づけられた.
  • 太田 勝巳, 伊藤 憲弘, 細木 高志, 遠藤 浩司
    1992 年 61 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ミニトマトの収穫労力の合理化と付加価値を高めることを目的として, エスレルおよびアブシジン酸 (ABA) による房どり法を検討した.
    ミニトマト (品種'ミニキャロル') を供試し, 15果 (シングル果房) および20果 (ダブル果房) に予め摘果した果房においてエスレル100,200ppmおよびABA250,500ppm処理を行った.
    その結果, エスレルおよびABA処理いずれの処理によっても果実の着色が促進され, 果房全体の果実の着色程度が斉一化された. また, 果実重および酸度にはあまり影響がなかったが, 果実の糖度はいずれの処理でも増加する傾向を示した. 果皮および果肉の硬さも低下する傾向がみられ, 果房内の果実の熟度が促進されることが認められた.
    果実の裂果発生はエスレル処理によって減少する傾向がみられ, 特にエスレル200ppm処理区では10%以下となった. 一方, ABA処理区では対照区と同程度の裂果発生がみられた.
    以上の結果, ミニトマトの房どり法としてはエスレル200ppmが最も効果的であることが示唆された.
  • 山本 雄慈, 松本 理
    1992 年 61 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    サトイモ品種'石川早生'のin vitroでの球茎形成条件を検討した. また, 培養で得た球茎 (培養球茎) 株の露地栽培における生育特性を慣行栽培の球茎 (慣行球茎) 株と比較した. さらに培養球茎株の栽培条件と生育特性との関係を明らかにするため来歴の異なる4種の種芋について生育調査を行った.
    1.増殖した苗条をショ糖8%MS液体培地に移し30μmol•m-2•sec-1, 25°C条件下で40日間培養することによ殖径約10mm, 重さ約1gの球茎を持つ苗条を得ることができた.
    2.培養球茎を用いると特別な順化過程を経ることなく培養苗を植え出すことが可能と判断された, したがって従来の方法に比べて一度に大量のウイルスフリー種苗を供給することが可能となる.
    3.培養球茎 (球茎重1g) を用いた栽培では地上部や親芋が小型化するが可食部の収量は慣行球茎 (球茎重60g) 株と同程度となり植物体全体や全芋重に占める可食部の収量割合は高かった. また, 子芋も小型化し形状も良くなるため慣行球茎株に比べ大きさや形状の揃った芋が多数得られた.
    4.培養球茎株の地上部の生育は, 慣行球茎株, 慣行小球茎 (慣行球茎のうち小さい球茎) 株ならびに順化球茎 (培養球茎株の6葉期に乾燥処理を行い形成した球茎で球茎重は1.6g) 株より劣った. 子芋, 孫芋の着生数, 親芋の肥大は種芋の大きさによる影響が認められた.
    5.順化球茎株は慣行小球茎株に類似した生育特性を示した.
    6.以上のように培養球茎株は地上部の生育, 子芋の形状が慣行球茎株, 慣行小球茎株, 順化球茎株とは明らかに異なることから培養中の前歴が球茎や地上部の生育に影響を及ぼしていると推察された. 培養球茎はその特徴ある生育特性を生かすことができれば栽培用種芋として利用が考えられる.
  • Hegazi H. Hegazi, 松原 幸子
    1992 年 61 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ダイコン8品種, キャベツ3品種カブ3品種,カリフラワー1品種, プロッコリ1品種のプロトプラスト培養によるカルス形成, 植物体再分化を試みた.
    プロトプラスト単離のために適した条件をダイコンで検討した結果, 5日齢の実生の子葉を細断し, 2%セルラーゼY-C, 0.2%ペクトリアーゼY-23, CPW塩, 0.3%マニトールからなる酵素液中で2時間, 27°C条件で振とうすることにより高収量のプロトプラストが得られた. 16品種のアブラナ科植物についても種々の条件を検討したところ, 供試材料として胚軸より子葉が適し, 3種類の酵素液の中ではダイコンと同じものが適していた. 単離したプロトプラストの培養は,Pelletier (1983) のB培地で最初の3日間暗黒, その後徐々に1,5001xの明条件にもって行った. 次いで7~10日おきにC培地を添加していくことにより4週間後にはコロニー形成がみられ, さらに1月後にはカルスとなった. それらをE培地に移植することにより苗条を再分化するものがあった. ダイコンでは'守口', カブでは'金町小蕪', 旧野菜蕪'だけであったが, 他の品種ではすべて苗条再分化がみられた. 根はすべての品種で再分化した. 苗条は, 切り取ってMS培地に移植することにより発根した.
  • 松原 幸子, 胡 開林, 村上 賢治
    1992 年 61 巻 1 号 p. 69-77
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ナスおよびピーマンのやく培養による半数体の生産率を高めるための処理を試みた. 1核期の花粉を含んだやくを種々の2,4-Dとカイネチンを含むMS培地に植え付け, 培養物は高•低温処理をした. 胚様体,カルスからの不定胚が得られ, それらをMS培地に移植し, 次の結果を得た. ナスについては次の結果を得た.
    1.培地については, 0.1mg•1iter-1の2,4-Dとカイネチンを添加した培地に植え付けたやくで最も高率にカルスや胚様体を形成した. 温度処理については,培地に植え付けたやくを35°Cで24時間処理するものがカルスや胚様体形成に最も効果的で, 低温処理は効果がないか, むしろ抑制的であった.
    2.カルスからの胚様体や不定芽再生は, ホルモン無添加, 1mg•liter-1のカイネチン, または1mg•liter-1のカイネチンと0.05 mg•liter-1のNAA添加培地にカルスを移植することにより効果的に得られた.
    3.小植物体は0.8%寒天と5~8%のショ糖, または0.2%ゲルライトと3~5%ショ糖を添加した培地に移植したとき正常に生育した.
    ピーマンについては次の結果を得た.
    4.カルスは培地に0.1mg•liter-1 2,4-Dと0.1mg•1iter-1カイネチン, または0.1mg•liter-1の2,4-Dとカイネチンを添加した培地上で高率に得られた.一方, 花粉から直接胚様体を得るためには, 0.02mg•liter-1カイネチン添加, または0.004 mg•liter-12,4-Dと0.1mg•liter-1カイネチン添加培地に植え付けるが有効であった.
  • 松原 幸子, 三木 典子
    1992 年 61 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ダイコン花粉の発芽が50mg•liter-1ホウ酸, 100 mg•liter-1塩化カルシュウム, ショ糖, ゲル化剤添加培地上で検討され, 15%ショ糖と0.2%ゲルライトを添加したとき最も高い発芽率を得, これを基本培地とした.この基本培地に柱頭, 花柱, 子房, 胚珠などの花の器官を添加すると, 発芽率がさらに高くなり, その中では, 若い柱頭が最も効果が高かった.
    花器中の発芽促進物質は, メタノール, 酢酸エチルにより抽出され, 酢酸エチルで中性分画に最も高濃度に, 次いで酸性分画に分画される物質によるものと考えられた.
    その他, グリココール酸およびコール酸でも発芽促進効果がみられた.
  • Suchila Techawongstien, 繩田 栄治, 重永 昌二
    1992 年 61 巻 1 号 p. 85-92
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    異なる地域から入手したトウガラシ (Capsicum an-nuum L.) 15品種の水ストレスに対する反応を調査した. 水ストレス処理は開花直前に灌水を完全に停止することにより与えた. 処理した個体が昼夜を通じて激しい萎凋を示した段階で再灌水を行った. 早生品種は中生•晩生品種よりも長期間水ストレスに耐えた.これは, 早生品種が中生•晩生品種に較べ処理開始時の齢が低く個体も小さかったことと, 処理期間の湿度が高く温度も低かったことによるものと思われる.
    ロングビッグおよびクラスタタイプの品種では, 水ストレスからの回復が遅く水ストレスに起因する種々の症状がみられたが, コーンタイプの品種ではそういった現象はみられなかった. 処理期間中すべての品種で伸長生長が停止または減少したが, ほとんどの品種で再給水後急速な茎長および葉身長の回復が認められた.このように伸長生長の急速な回復がみられること, 最終的な茎長•地上部重•根重がほとんど減少していないこととから, 光合成や呼吸等の代謝系はストレスによる傷害を受けていないことが示唆される. しかしながら, 栄養生長器官の急速な回復は果実の発達を抑制し, 結果的にいくつかの品種で収量減をもたらしたように思われる. 処理個体では, 収穫が遅れた. 収穫の遅れと処理期間がほぼ同じ品種で収量が減少する傾向があった.
  • 古在 豊樹, 串橋 直, 久保田 智恵利, 富士原 和宏
    1992 年 61 巻 1 号 p. 93-98
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    CO2施用•光独立栄養培養条件下のバレイショ培養小植物体に関し, 明期と暗期の気温差DIF (DIF=明期気温-暗期気温) を小 (明期気温<暗期気温) とすることにより小植物体の全生体重および全乾物重をほとんど減少させずにシュート長を短くし, また葉数をやや増大させ得ることを明らかにした. 同-DIF条件下では, PPF (光合成有効光量子束) を高くすることにより, シュート長は短く, 他方, 全生体重, 全乾物重および葉面積は大となった. これらの結果から, 培養環境調節による培養小植物体のシュート長制御技術の一つとして, DIFが利用可能であることが示された.
  • 河鰭 実之, 田原 誠, 崎山 亮三
    1992 年 61 巻 1 号 p. 99-105
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    カブ肥大根における水の蓄積量の変化が糖の蓄積と糖濃度に及ぼす影響を明らかにするため, 肥大根の周囲に取り付けたアクリルパイプでその内径以上の肥大生長を機械的に抑制して水の蓄積を抑制し, その影響を調査した.
    肥大抑制区の肥大根の体積は, 無処理区の肥大根の1/3程度まで抑制された. 肥大根当たりに蓄積した乾物, エタノール不溶性固形分, グルコース, フルクトースの量は肥大抑制区の方が少なく, スクロースの量は影響を受けなかった.
    水分量当たりに含まれる各成分含量を比較すると,乾物含有率は, 肥大抑制処理により増加した. 主要な糖であったグルコースとフルクトース濃度はやや低下し, 一方スクロース濃度は増加し, 全糖濃度は一定であった. 形成層の外側, すぐ内側, 肥大根の中央部の3か所の部位について各成分含量を調べたが, 処理の影響に部位による差は認められなかった.
    肥大抑制処理によって全糖濃度が影響を受けなかったことは糖の蓄積は水の蓄積に依存して変化することを示す. グルコースおよびフルクトースとスクロースとの間で肥大抑制処理による影響が異なったことから,肥大根の糖濃度は代謝的に調節されている可能性があった.
  • Niramit Kitroongruang, 上堂 秀一郎, 久井 潤也, 加藤 正弘
    1992 年 61 巻 1 号 p. 107-114
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    耐暑性を持つと考えられる9-8系統を含むメロンの4品種•系統と,それらの若干の雑種について,ハウス内における光合成と蒸散の日変化を携帯型分析計を用いて調査した. その結果, 品種•系統間で, 光合成速度および蒸散速度に有意な差が認められ, 光合成速度の高い系統は蒸散速度も高い傾向を示した.さらに,日中の高温時にハウスを締めて50°C30分間および48°C60分間高温処理を行うと,各品種•系統とも処理後の光合成速度が減少した. しかし, 蒸散速度は減少しなかったので, 高温処理による熱ストレスは気孔抵抗ではなく葉肉抵抗を増加させ, 光合成を低下させたことが推察された.
    9-8系統およびその雑種では, 高温処理後の光合成の減少が小さいことから, 9-8系統は耐暑性能力を保有し, それが遺伝することが立証された.
    高温処理に伴う光合成反応とイオン漏出法で判定した耐暑性とは一致せず, イオン漏出法は耐暑性の判定に利用し得ないことが分かった.
    光合成速度が, 蒸散速度, クロロフィル含量および葉内窒素含量と有意な相関を示すことから, 高温処理後の高い光合成速度とともに, 高いクロロフィル含量および高い葉内窒素含量が, 耐暑性メロンの選抜指標に利用できる可能性が示唆された. なお, 指標の有用性については, 品種等の幅を広げて今後とも検討する必要があろう.
  • 小川 幸持, 藤山 尭然, 岩井 静子
    1992 年 61 巻 1 号 p. 115-120
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    光周性花成 (短日性) のアサガオ, 系統キダチの本葉を有する成体植物は連続照明下でも数日間の低温処理 (15°C) によって花成が誘導される. この低温処理の前か, あるいは後の時期に高温下 (20°から35°C) に置くと, この低温花成は減少した. この高温による抑制は, 草齢が進むと減少した. また, ジベレリンA3を茎頂に処理すると減少した.
    低温(15°C) と高温の日周的な温周期では, 花成誘導に必要な低温時間は, 合計の低温時間に関係なく,各草齢である一定の時間以上に限定された. この温周期の花成の限定低温時間は, 草齢が進むと短時間になった. また, 高温が相対的に低くなると短時間になった.
    アサガオの成体植物において, 草齢が進むにつれて低温性花成の強さが増加するのは (小川ら, 1990), 茎頂組織が成熟の進行につれて高温の抑制作用に対する感応が低下することによると思われる.
  • 細木 高志, 浜田 守彦, 前田 俊幸, 後藤 貴洋
    1992 年 61 巻 1 号 p. 121-126
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    12月下旬および上旬のボタンの切花生産が, それぞれ春咲き種および寒咲き種を用いて試験された.
    春咲き種で大きい肥大根をもつ4年生株では株当たり2~3本の切花が収穫できたが, 小さな肥大根しかもたない2年生株では1本しか収穫できなかった. 4年生株の切花品質は2年生株のそれと同等かやや優れていた.
    12月上旬の切花生産は, 短期冷蔵を行った寒咲き種を用いると可能であった. 冷蔵した株の切花品質は無冷蔵株に比べはるかに優れていた.
  • 青木 宣明
    1992 年 61 巻 1 号 p. 127-133
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    予備冷蔵の有無と生育初期温度 ('花競') ならびに栽培温度 ('花競, '八千代椿') が促成ボタンの生育と切り花形質に及ぼす影響について調査した.
    1.予備冷蔵処理の各区は, 対照区の各区に比べ,ほう芽期や開花期が促進した. 予備冷蔵処理区で生育初期温度が高い場合には, 開花率が著しく低下した.しかし生育初期温度が低い場合, 予備冷蔵処理区も対照区と同様に開花率は高かった. 予備冷蔵処理によって, 開花期の花弁数が減少する傾向はあったものの,葉の展開は良好で草姿が優れた.
    2.中期促成において, ほう芽から開花までの平均温度が17°C前後のとき, '花競', '八千代椿'の両品種とも30日以内で開花した. 平均温度が約4°C下がれば15日間の開花遅延が生ずるものの, 切り花品質は著しく向上した.
    以上の結果から, 栽培温度が低ければ開花率や切り花品質は向上するものの, 開花日は遅延する. したがって栽培温度は後作や需要との関連で決定すべきであろう.
  • 林 孝洋, 宮田 弘恵, 小西 国義
    1992 年 61 巻 1 号 p. 135-141
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    シュッコンカスミソウを時期を変えて栽培し, その花序の発達と構成の変化から, 花序発達の規則性と可変性を明らかにしようとした. シュッコンカスミソウの花序はユニット (岐散花序) の集合体と考えられる.そこで調査は, 栽培環境に対する花序構成の変化がよくわかるように, シュート全体とユニットの二つの階層で行った.
    花序発達にいくつかの規則性が認められた. シュートレベルでは, 主茎および側枝の断面積と着花した小花数の間に高い相関関係があった. またユニットレベルでも, 花序軸の直径と分化した小花の最高次数, 小花数, 新鮮重との間に高い相関関係が認められた.
    花序発達の栽培環境に対応する可変性は非常に大きかった. 春から夏にかけて定植時期が遅くなるほど,到花日数が少なく低節位で花芽分化し, 茎長が短く,生重が小さく, 側枝および小花が少なくなった. 一方ユニットは, 定植時期が遅くなるにつれ, 花序軸が太く, 生重が大きく, 小花の分化次数が高ぐ, 小花数が多くなった. ユニットの数と大きさは相反する形質として季節変動した.
  • 桝田 正治, 岡部 裕紀, 関谷 次郎, 小西 国義
    1992 年 61 巻 1 号 p. 143-149
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    フリージア種子の発芽特性, 発芽に及ぼす化学物質の効果ならび温度処理に伴うタンパクレベルでの代謝変化について検討した.
    1.フリージア'ロイヤルクラウン'の種子の発芽適温は15°~20°Cであり, 30°Cではまったく発芽しなかった. 20°Cで発芽直前の種子であっても30°Cに移されると, その発芽は完全に阻害された. 20°Cで発芽前の種子を30°Cの温度に遭遇させ再び20°Cに戻した場合, 可逆的に発芽を開始したが, 30°C遭遇時間が長くなるにつれて発芽に要する日数が長くなった. 30°C遭遇日数が4日以上では, その日数に関係無く20°Cでの発芽所要日数は約6日で一定していた. 一旦発芽すれば, 高温による生長阻害はみられず, 発芽後の生長は25°Cが最もよかった.
    2.生長調節物質のGA3, BA, ゼアチンおよび濃硫酸処理によっても30°Cでの発芽は誘導できないが,濃硫酸の10分間処理は20°Cでの発芽を促進し, 発芽の斉一性において優れた.
    3.未発芽種子の胚を摘出して無菌培養すると根は30°Cでよく伸長し, その伸長速度は20°Cより30°Cの方がはやかった.
    4.種子を20°Cと30°Cに置くと胚の電気泳動パターンに違いが生じたが, 胚乳においては違いは認められなかった. 14C-ロイシンの総取り込みおよび24%トリクロロ酢酸不溶性画分 (タンパク画分) への取り剤込みは胚, 胚乳とも30°Cの方が低かった. 特に胚乳において30°C•24時間後の総取り込みの低下が著しかった.
  • 青木 宣明
    1992 年 61 巻 1 号 p. 151-157
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    予備冷蔵 (以下予冷) の有無がボタン品種の花芽の発育と促成開花に及ぼす影響について調査した。
    1.本冷蔵前の予冷処理によって花芽の発育は進み,予冷終了時の花弁数が増加した。無処理区でも花弁の増加は認められたが, 予冷処理区に比べるとその値は小さかった。'花競'や'島大臣'の一部個体中に雄ずい分化が, また'墨流'では雌ずい分化が認められた。さらに花弁と雄ずいとの間に未分化部位が認められ, 花弁と雄ずい分化を同時に進行させる時期が存在すると推察された。
    2.予冷処理区は無処理区に比べ, 発芽や開花がやや早い傾向を示した。無処理区の'日月錦', '八重桜','八千代椿'は開花率が100%, '島大臣'と'墨流'は83%であった。予冷処理区の'日月錦'も83%であった。'芳紀'と鎌田錦'の開花率は, 予冷の有無にかかわらず, きわめて低かった。'花王'は無処理区が0%であったのに対し予冷処理区は50%であった。
    3.開花率の実用限界 (80%) を越えた各品種の草姿は, 予冷処理がなくても茎葉の伸長は良好で, 切り花の草姿に問題はなかった。開花時の花弁数は予冷終了時とは逆に, 予冷処理区は無処理区に比べ減少する傾向を示し, とくに'墨流'においては激減した。
    以上のことから, ボタンの年内促成には従来の品種群に加え, 予冷処理なしに'日月錦', '八重桜', '島大臣'ならびに'墨流'などの品種が有効と思われる。また予冷処理によって開花率が向上する品種, 低下する品種およびあまり変化しないか変化しても差が少ない品種の3群に分類できるのではないかと推察された。さらに予冷処理によって切り花の花弁数が減少するのは, 花弁と雄ずいとの間に存在する未分化部位において, 花弁より雄ずいが優先して分化する結果と思われる。
  • 市村 一雄, 山本 幸男
    1992 年 61 巻 1 号 p. 159-165
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    テッポウユリの自家不和合性は雌ずいの老化に伴い弱まることが知られている. また花粉管は花柱溝粘液中を生長するので, 花柱溝粘液は自家不和合性の発現と関係していると考えられている. そこで老化に伴い自家不和合性が弱まることと花柱溝粘液との関係について検討した.
    雌ずいの老化に伴い花柱溝粘液中の炭水化物量は増加した. これは老化雌ずいでは花柱溝粘液が蓄積することを示唆している. 平均分子量が50,000である花柱溝粘液中のアラビノガラクタンの分子量分布および組成に, 令に伴う変動はみられなかった. 自家不和合性が強い若い花令の雌ずいから採取した花柱溝粘液と,自家不和合性が弱まった老化雌ずいから採取した花柱溝粘液とを, それぞれ花柱溝に注入すると, どちらも自家花粉管生長を著しく促進した. 両者の間で促進の程度に差はみられなかった. 自家不和合性が弱まった老化雌ずいから花柱溝粘液を水で洗浄することにより取り除くと, 自家花粉管生長は有意に抑制された.
    以上の結果, 雌ずいの老化に伴い自家不和合性が弱まる主因は花柱溝粘液の蓄積であると考えられた.
  • 沢村 正義, 宮本 裕子, 野村 早苗, 松本 博
    1992 年 61 巻 1 号 p. 167-174
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    西南暖地のビニルハウス内で栽培されたマスクメロン (Cucumis melo L. 'Earl'sSeine') の成熟特性および季節別収穫果実の保蔵特性に関して研究を行った.また, 新たに開発した鮮度保持紙の効果も併せて検討した.
    1.樹上の果実では成熟とともにエチレン生成量が漸増した. 親木から切り離された果実ではエチレン生成の時期が早まるとともに, 増加速度も生育とともに早くなった. 開花後60日目の果実では収穫後6日目にエチレン生成量が最大 (3.5μl•kg-1•hr-1) となった. 果肉硬度および可溶性固形物含量から'Earl'sSeine'の収穫適期を考察した.
    2.20°C保蔵の場合, 果肉硬度が350g以上を保持した期間は, 夏季および秋季収穫果実で7日以上, 冬季および春季収穫果実で7日未満であった.
    3.4°C保蔵の場合, 夏季収穫果実は3週間目から低温障害が現れ始めた. また5週間目で果肉硬度は263gに低下した. 冬季および春季収穫果実では4週目でも低温障害がほとんどなく, 鮮度が良好に保持された.
    4.鮮度保持紙を内張りした段ボール箱で果実を20°Cで1週間保蔵したところ, 無処理の対象区に比べ,果肉硬度の低下が有意に抑制された.
  • 下川 敬之, 内田 好則
    1992 年 61 巻 1 号 p. 175-181
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    エチレン処理したウンシュウミカン果実の果皮より調製した粗酵素液中に, クロロフィリドaを分解する酵素が存在することを明らかにした. 本研究では, この酵素反応について, 次のことを明らかにした. この酵素反応には1) H2O2とDCPが必要であること, 2)シアン, チロン, ヒドロキノンで阻害され, 2,5-ジメチルフランで阻害されないこと, 3) 至適pHは62であること, 4) タンパク質量に対する反応量は直線的であること, 5) Km値がほぼ20μMであること. これらの値と性質は, この酵素が生体内で作用していることを示している. また, クロロフィリドa分解酵素の性化には, タンパク質合成阻害剤のシクロヘキシミドの影響を受けないことがわかった. さらに, 反応液の可視部でのスペクトルの変化, 特に, 経時的な波長のシフトから, クロロフィリドaはフェオ化合物など,人間の視覚に感じにくい物質に変化しながら, 無色の物質にまで変化するものと推論した.
  • 田中 敬一, 猪俣 雄司, 川瀬 信三, 関本 美知, 永村 幸平, 川上 千里
    1992 年 61 巻 1 号 p. 183-190
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ニホンナシ'豊水'のみつ症の発生機構の解明と防止技術の開発のために, 各種カルシウム剤カルモジュリン阻害剤等を樹上の果実に散布および果梗部へペースト塗布を行った.
    1.ニホンナシ果実内のカルシウム濃度を増加させる薬剤として塩化カルシウム, 酢酸カルシウム, クエン酸カルシウム, グルコン酸カルシウム, Ca-EDTAを処理したところ, 散布では対照区と異ならなかったが, ペーストでは, みつ症の発生を抑えた.
    2.みつ症多発園におけるCa-EDTAペースト処理は, 健全果率を4倍に増加させ, 重症果率を約6割減じることができ, 効果的にみつ症の発生を抑制した.このことから, Ca-EDTAのペーストによってニホンナシのみつ症を防止できる可能性が示唆された.
    3.Ca-EDTAペースト処理はエテホンに由来するみつ症の発生を抑制した.
    4.カルモジュリン阻害剤であるトリフルオペラジンは, 散布処理, ペースト処理ともにみつ症の発生を助長した.
    5.Ca-EDTAペースト処理した果実のカルシウム含量は対照果実と比較してアルコール可溶性画分で高く, 緩衝液可溶性画分および塩可溶性画分では低かった. このことから, カルシウムの生体内の分布の違いがみつ症の発生と関係があるものと思われた.
  • 宮崎 丈史
    1992 年 61 巻 1 号 p. 191-197
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    サツマイモ表皮色と表皮アントシアニンの品種間差異および生育中と貯蔵中における変化について調査し,以下のような結果を得た.
    1, サツマイモの表皮色を構成するアントシアニンは, 4品種ともペオニジン配糖体が多くシアニジン配糖体は少なかった. また, アシル化アントシアニンは'紅赤'に多く, 'ベニアズマ'には少なかった.
    サツマイモ表皮の1%塩酸-メタノール抽出液の吸光度は色の濃淡とよく一致し, 最も濃い'ベニアズマ'は紅赤'などの品種に比べて約2倍の吸光度を有していた.
    2, 生育中に, 表皮特有のアントシアニン成分であるP-3 (ペオニジン3-ジグルコシド5-グルコシド) と園学雑. (J. Japan. Soc. Hort. Sci.) 61 (1) :191-197.1992.P-6 (p-ヒドロキシベンゾイルペオニジン3-ジグルコシド5-グルコシド) が, '紅赤'および'ベニアズマ'に共通して増加した.
    3, 貯蔵中に表皮色は変化し, 貯蔵6か月後には表皮抽出液の吸光度で2~3割減少した. また, 表皮色はキュアリング処理によっても約2割減少した.
    貯蔵湿度を100%RH近くに高めると, 表皮色は収穫時に近い色調を保つもののやや淡くなり, 貯蔵4か月以降には一部に斑状の変色なども生じた. このため,4~6月間の長期貯蔵におけるサツマイモ表皮色の保持には, 13°Cで95%RH程度の貯蔵環境が適しているものと考えられた.
  • 高 俊平, 西村 修枝, 久保 康隆, 中村 怜之輔, 稲葉 昭次
    1992 年 61 巻 1 号 p. 199-204
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    SystemI-C2H4がsystemII-C2H4と同様にACC-C2H4系により生合成されているかどうかをトマト,ウメおよびキュウリ果実を用いて調べた.
    1.ACC合成酵素の阻害剤であるAOAとEFEの阻害剤であるSAはいずれの果実でも, systemI-C2H4の生成を効果的に抑制した. また, ACC含量は, AOA処理で減少し, SA処理で蓄積する傾向がみられた.
    2.トマト果実を45°C高温処理したところ, 成熟果実では12時間でEFE活性はほぼ完全に抑制され, それに伴ってsystemI-C2H4の生成もほぼ完全に停止した。しかし, preclimacteric段階の果実ではEFE活性の抑制はかなりみられたが, systemI-C2H4の生成抑制率は50%以下であった.
    3.これらの結果から, トマトでは若干疑問が残るものの, 大部分のsystemI-C2H4はsystemII-C2H4と同様にACC-C2H4系によって生合成されているように思われた.
  • 邨田 卓夫, 山脇 和樹
    1992 年 61 巻 1 号 p. 205-210
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ハッサク, イヨカン'宮内', ナツダイダイ'川野, ネーブルオレンジ'森田', ポンカン'太田'果実を収穫後7日間, 1°C (90%:95%RH), 5°C (93%:98%), 10°C (85%:95%), 15°C (73%:93%), 20°C(64%:92%) および25°C (54%:88%) で予措処理し, その後5°±0.5°C, 88±5%RHの恒温室で貯蔵し, 果実品質を調べた.
    1.予措処理中の目減りは, 予期したとおり高温•低湿区で大きく, 低温•高湿区で小さかった. 5°C本貯蔵中の目減りは高温予措区で小さく, 貯蔵終了時の果実の目減りの, 予措条件の違いによる差は小さくなった. 果肉率, 果汁率に対する予措処理の影響は明らかでなかった.
    2.果皮色の橙色化に対する予措処理の影響は, 15°C処理区で最も大きく, 10°C区がこれに次ぎ, 1°C, 25°C区では榿色化が極端に抑制された.
    3.貯蔵終了時の果実の糖度と酸含量 (クエン酸として) は25°, 20°, 15°C予措区で高く, 1°, 5°C予措区で低い傾向を示した.
    以上の結果から, 中晩生カンキツ果実の貯蔵中の品質保持•改善に, 10°~15°Cの予措処理が有効であろうと推論した.
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