園芸学会雑誌
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わが国栽培ギクにおける枝変わりの出現と染色体数の変異について
遠藤 元庸稲田 委久子
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1992 年 61 巻 2 号 p. 389-398

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抄録

1.栽培ギクにおいて染色体変異が生ずる機構を明らかにするため, 花色についての枝変わりに注目し,わが国の栽培ギク297品種における枝変わり品種の出現様相ならびに染色体数と核型などを調査した.
2.枝変わり品種の出現様相:枝変わり品種の出現頻度は栽培ギク品種の用途別種類によって, 5.2ないし15.7%と異なり, 平均10.8%であった.
3.枝変わり品種の染色体数の変異:成立由来の明確な枝変わり32品種とその母品種25品種を用い,染色体数を調査した結果, 15.6% (5/32品種) の枝変わり品種では, それらの母品種より染色体数が1個増減していた.
4.枝変わり品種の栄養繁殖系における核型, 特に付随体染色体の変異:染色体数は母品種のそれと同一であっても, 付随体染色体の数および形態に相違が認められ, 染色体の構造変化が生じていることが示唆された.
5.枝変わり品種の栄養繁殖系における染色体数と諸特性の変異:母品種は同数の2n=54であった(4/5系統) が, 枝変わり品種には2個減数した2n=52が見出され (2/4系統), これらの染色体減数系統は正常系統に比べて諸特性が明らかに異なった.
6.以上の結果から, わが国の栽培ギクにおける染色体数の変異の発生は, 枝変わりの出現に対して関与する場合があるが, その程度は栽培ギクの種類または品種により異なると考えられる.

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