園芸学会雑誌
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ユリ花粉の貯蔵と受精能力
新美 芳二塩川 有
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1992 年 61 巻 2 号 p. 399-403

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抄録

4°Cで数か月から1年にわたって貯蔵したユリの花粉の発芽能力および種子形成能力を人工培地での発芽試験および植物体上での交配実験により調べた.毛筆を用いてやくから集めたユリ'エンチャントメント'の花粉をパラフィン紙に包み, 4°C, 相対湿度30~40%,60~65%および90~95%に調節したデシケータに貯蔵すると,60~65%で貯蔵した花粉が発芽力を長く維持した.
一方, やくをアセトンに浸漬して集めた花粉はパラフィン紙に入れて貯蔵すると発芽力は貯蔵1週間後には無くなり, ゼラチンカプセルに入れて貯蔵すれば花粉の発芽能力は長期間維持された. これらの結果に基づきゼラチンカプセルに入れて, 4°C, 相対湿度60~65%で9~12か月貯蔵した12種類のユリ花粉を人工培地で培養したところ, 4種類はまったく発芽せず, 8種類は発芽したがその発芽率および花粉管長は品種間で大きな差がみられた. また, これらの貯蔵花粉の種子形成能力を交配実験によって調べたところ, イワユリおよびヤマユリは新鮮花粉とほぼ同程度の種子形成能力を持っていたが, 人工培地で比較的よく発芽したヒメサユリや他のユリの花粉はほとんど種子を形成せず,人工培地での発芽能力と植物体上での種子形成能力は必ずしも一致しないことが明らかになった.

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