園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
スイカ果実における空洞発生と果肉細胞•細胞間隙の大きさ•数との関係
加納 恭卓
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 62 巻 1 号 p. 103-112

詳細
抄録

スイカの果実中に空洞が発生すると,その果実の商品価値は半減し栽培農家は大きな損失をこうむる.本報告では空洞の発生と果実中の細胞および細胞間隙の大きさとその数との関係について調べた.
低節位に着果した果実では空洞体積も果重も大きかったが,NAAを処理した果実や摘葉処理をしたものでは空洞体積も果重も小さくなった.果実中の細胞総数は低節位果,NAA処理果,摘葉処理果では少なかった.低節位果では細胞総数中で大きな細胞が占める割合はNAA処理果や摘葉処理果に比べ高かった.また,低節位果ではNAA処理果や摘葉処理果のものに比べ,細胞間隙の大きさも大きく,数も多かった.高節位果では果重は上述した3区の果実のものよりも大きかったが,空洞体積は小さくなった.果実中の細胞総数は他の果実よりも多く,細胞総数中で大きな細胞の占める割合は低節位果よりも小さかった.また,低節位果より細胞間隙の大きさは小さく,数も少なかった.
したがって,スイカ果実中の空洞発生について次のように推論することができよう.低節位果のように果実中の細胞総数が少ない場合には,果実内部の生長と果実外側部の生長との間に不均衡が生じ,果実内部で内部組織を引っ張るような力学的な歪みが発生し,空洞が発達する.しかしながら,細胞総数が少ない低節位果でもNAA処理や摘葉処理により果実の生長を抑制すれば,果実内部の生長と外側部の生長との間には不均衡は生ぜず,果実内部には力学的な歪みが生じないので空洞は発生しない.これに反して,細胞総数の多い高節位果では,たとえ果実の生長が促進されても内部の生長は外側部の生長と均衡が保てるため力学的な歪みも生じず空洞は発達しない.

著者関連情報
© 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top