抄録
1.スギ樹皮を生のままで土壌に混和して使用した場合には樹の生育に悪影響を及ぼすことがある. この原因は土壌中でスギ樹皮が分解されるときに発生するエチレンが関与しているものと思われた. しかし, マルチ資材としてスギ樹皮を使用した場合には樹の生育,養分吸収, 果実の品質などに悪影響を及ぼすことはなく, むしろ夏季の土壌乾燥を防止したり, 地温の急激な変化をやわらげることによって, 樹の生育が対照区と比べて旺盛になる傾向が観察された. ただし, マルチ資材としてのスギ樹皮の多量使用は果実品質を低下させる傾向があるので, 使用量は10a当たり4t(DW) までに抑える必要がある.
2.ヒノキ材の場合, 樹皮などに生育抑制物質が多量に含まれており, 家畜ふん尿を混合し推積する方法で腐熟化させても, 抑制物質の存在しない良質な堆肥を簡便に作ること力灘しい. そこで, 堆積前にあらかじめ抑制物質を除去する方法として, 熱, 酸およびアルカリ溶液浸漬処理を試みたところ, 熱処理およびアルカリ溶液浸漬処理で有効な結果が得られた. 特に,カラタチなどの生育を著しく阻害する縮合性タンニン含量は石灰 (0.1%生石灰および0.1%消石灰) 溶液に浸漬処理すると効果的に減少し, 生育阻害効果が消失した.