園芸学会雑誌
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ミクロレイヤー薄層クロマトグラフィーによる橙色および黄橙色系トマトのシスおよびトランス型カロテン類の定量
城島 十三夫
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1993 年 62 巻 3 号 p. 567-574

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抄録

劣性ホモtt型の橙色および黄橙色系トマトのシスおよびトランス型カロテン類をミクロレイヤー薄層クロマトグラフィー(m-TLC)を用いて定量分析した.
1.栽培品種および育成系を8系統,すなわち,榿色系(RRtt)の3系統,黄橙色系(rrtt)の2系統,赤色系(RRtt)2系統および黄色系(rrtt)1系統を供試した.
2.RRttおよびrrtt系のカロテン類はMgO:アルミナ:セルロース:CaSO4(10:6=2:2,w/w/w/w)のm-TLCによって11のスポット(J1~J10およびJ5-2)に分離した.これらのカロテン類は,フィトエンとフィトフルエンの混合体,β-カロテン,ζ-カロテン,プロニュウロスポレン,プロリコピン,ニュウロスポレン,プロ-γ-カロテンおよび4種の異なるリコピン,ポリ-シス-リコピン(b),ポリ-シス-リコピン(a),ネオリコピンおよびトランス-リコピンと同定した.
3.これらの11種のカロテン類はヨード触媒による異性化反応によって,6種のカロテンに変化した.異性化したこれらのカロテン類の諸性質は赤色系トマトから単離したカロテン類,すなわち,フィトエンとフィトフルエンの混合体およびトランス型のβ-,ζ-およびγ-カロテン,トランス型のニュウロスポレンおよびリコピンとほぼ一致した.
4.m-TLCによって展開したカロテン類はクロマトスキャナで直接計測し,標準曲線を用いて定量した.橙色系(RRtt)のトマトは生体果実g当たり総カロテン量130~142μgを含有していた.これは赤色系(RRtt)(71~75μg)の約2倍,黄橙色系(rrtt)(15~26μg)の5~10倍であった.
5.劣性同型接合体tt系トマトは種々のシス型カロテンを含み,シスおよびトランス型のζ-カロテン(19~44%),ニュウロスポレン(18~22%)およびリコピン(20~48%)を高い比率で含有するのが特徴であった.さらに,プロ-γ-カロテンをβ-カロテンとほぼ同量含んでいた.これはβ-カロテンの生合成経路においてプロ-γ-カロテンを経由する新しい経路の存在を示すものと考えられる.

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