園芸学会雑誌
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ニホングリ (Castanea crenata Sieb. et Zucc.) の花粉管伸長と胚珠の退化
中村 正博
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1994 年 63 巻 2 号 p. 277-282

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抄録

クリ'大和早生'を用いて, 柱頭で発芽した花粉管の伸長と胚珠の発達過程を調査し, 受精の時期と胚珠の退化時期との関連を検討した.
1.花粉管の伸長は, 中心子房で7月2日, 側子房で同2-6日から花柱先端に認められた.
2.子房内への花粉管の伸長は中心子房で7月14日, 側子房で同16日に初めて認められた. また, 子房内での最長花粉管は中心子房で7月28日, 側子房で8月1日に子房先端から胚珠珠心までの距離と同じ長さに達した.
3.子室内に侵入した花粉管は, 中心子房で7月24日から, 側子房で同28日から認められ, 中心子房では7月28日から, 側子房では同30日からいずれも8月3日までの間, 1子房当たりほぼ4~5本が数えられた. その後, 8月5日には確認できる花粉管数は急減した.
4.柱頭で発芽した花粉管は, 花柱と子房内合わせて中心子房で約8mm, 側子房で約9mmの距離を1日当たり約0.3mmの割合で伸長し, それぞれ26, 30日かかって胚珠の珠心に達した.
5.7月12日から19日かけて子房内のほぼすべての胚珠に珠心が発達した. 子房内で最大の胚珠を除く他の胚珠は7月26日以降肥大がほとんど停止した. 8月2日以降珠心の退化した胚珠がみられ始め, その割合は8月6日で40%, 同9日でほぼ100%に達した.8月9日各子房内に直径0.037mmの胚を含む1個の肥大胚珠が認められ, この胚珠は8月13日以降急速に肥大•生長した.
6.珠心の退化は受精時期後まもなく (1週間以内に) ほとんどすべての胚珠において観察されたことから, 雌花の発育初期1子房内に16~22個ある胚珠が1個を残してすべて退化する現象は不受精によるものと考えられた.

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