園芸学会雑誌
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サトイモのカルスから単離したプロトプラストからの植物体再生
村上 賢治木村 学松原 幸子
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1995 年 63 巻 4 号 p. 773-778

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抄録
サトイモ (Colocasia esculenta Schott) 品種'えぐいも'のカルスから単離したプロトプラストの培養および植物体再生技術を開発した.
1. プロトプラスト培養の材料に適した柔らかいカルスは, 黄化茎の切片を30g•liter-1ショ糖, 2mg•liter-1,4-D+2mg•liter-12ipおよび2g•liter-1ジェランガムを添加したMS培地で培養することにより誘導した. このカルスは, 同組成の新しい培地に継代培養すると増殖を続けた.
2. プロトプラストは, カルスを振とう培養して得られた懸濁培養細胞を酵素処理することにより, 容易に単離された. 酵素液の組成は, 1g•liter-1ペクトリアーゼY-23+5g•liter-1セルラーゼオノズカRS+5mM MES+5mM CaCl2•2H2O+0.5Mマニトールとした.
3. プロトプラストの培養は, 1/2濃度のMS無機塩, Kao and Michayluk (1975) の有機物に, 種々の濃度のNAA, BA, 2ip, 0.1Mグルコースおよび0.3Mマニトールを添加した液体培地で行った. これらのうち2mg•liter-1BAを添加した培地でプロトプラストを培養すると多くのコロニーが形成された.
4. プロトプラスト由来のコロニーを0.2mg•liter-1NAA+2mg•liter-1BAを添加したMS固体培地 (2g•liter-1ジェランガムで固化) に移植すると,コロニーからカルスが形成され, 同組成の培地でさらに継代培養すると苗条が再生した. この苗条を切取り,ホルモン無添加のMS固体培地 (2g•liter-1ジェランガムで固化) で培養すると発根した.
本研究で開発されたサトイモのプロトプラスト培養技術は, 今後再分化率の向上などを図ることによって,細胞融合や遺伝子導入を利用した新品種育成のための,有効な基礎技術となり得ると考えられた.
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