園芸学会雑誌
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ササユリの試験管内増殖と圃場への移植
新美 芳二
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1995 年 63 巻 4 号 p. 843-852

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抄録
萌芽間もないササユリの母球を堀り上げ, 組織培養による増殖と形成された子球の移植条件について調べた.
1.母植物を実験圃場より採集し, りん茎, 未展開葉, 茎に分離した. りん片および葉ではその基部付近,茎では先端部分から外植体を調整し, それらをMurashige•Skoog (1962) の無機塩培地と数種類の有機物, しょ糖を含む基本培地にNAA1.0mg•liter-1,BA0.1mg•liter-1添加した培地で培養した.
各外植体の子球形成数, 子球重および汚染率の結果から, 初代培養の外植体として葉切片がよいことがわかった. また, 葉切片の子球形成はNAA0.5mg•liter-1,BA0.05mg•liter-1の添加で促進されることもわかった.
2.無菌培養中の子球から分離したりん片を培養した結果, これらのりん片からの子球の形成および成長にはNAA0.1mg•liter-1, BA0.01mg•liter-1が適していた, またりん片当たりの子球形成数を増加させるためにりん片を分割して培養したが, りん片当たりの子球数の増加はわずかであった.
3.出葉開始時期, 最終出葉率, 子球と根の生長および子球の腐敗率の結果から, 試験管内で培養した子球を圃場に移植する前に12週間の4°Cでの低温処理が必要であることがわかった.
4.圃場への移植時に100mg未満の子球は培養期間中の明•暗条件に関係なく腐敗しやすく, 100mg以上の子球でも暗条件下で培養した子球は明条件下で培養したものと比べ腐敗する子球が多かった.
5.移植時に300mg未満の子球は培養中の光環境条件で関係なくすべて地中型植物 (HTP) となった.試験管内で400mg以上に生長した子球では, 明条件で培養した子球はほとんど地中型植物であったが, 暗条件のものはほとんどすべて地上型植物 (ETP) となった. これら地上型植物が開花するまでには少なくとも2年間の圃場での栽培を必要とした.
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