園芸学会雑誌
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自家和合および自家不和合ニホンナシにおけるS-タンパク質の発現と遺伝
平塚 伸岡田 吉司河合 義隆田村 文男田辺 賢二
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1995 年 64 巻 3 号 p. 479-484

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抄録
自家和合ニホンナシ'おさ二十世紀'の後代を用い,以前報告した (平塚ら, 1995) S2およびS4遺伝子に対応したタンパク質 (S-タンパク質) の発現と遺伝を調査した.
'おさ二十世紀'と'二十世紀のS-タンパク質バンドを等電点電気泳動で比較した結果, 'おさ二十世紀'のS4バンドは'二十世紀のものに比べてより薄く染色され, RNase活性も弱く, 佐々ら (1992) の報告と一致した. しかし, S2バンドについては両者で差が認、められなかった.
'おさ二十世紀'の自殖後代および'おさ二十世紀'×'二十世紀'のF1後代について, それらの花粉を清澄(S4S5) および'長十郎' (S2S3) の花に交配してそれそれのS遺伝子型を決定し, 遺伝子型とSタンパク質との関係を調査した. なお, 調査した後代のS遺伝子型については, S2S4およびS4S4の2種類しか認められなかった. 'おさ二十世紀'に由来するS4遺伝子を持つ後代個体のS4タンパク質バンドは薄く染色され, '二十世紀'由来のものは濃く染色された. また,S2タンパク質バンドはS2遺伝子を持つ個体で同様に検出され, その由来についての差は認められなかった.
このように, 'おさ二十世紀'の薄いS4バンドを含めたS2, S4バンドは後代の遺伝子型に対応して遺伝しており, これらはS遺伝子の産物と考えられた.また, 'おさ二十世紀'はS4遺伝子の発現が抑えられた突然変異であると考えられた.
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