園芸学会雑誌
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ナスの接ぎ木における台木の品種, 葉および台木の性状が穂木の生育に及ぼす影響
宍戸 良洋張 小路熊倉 裕史
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1995 年 64 巻 3 号 p. 581-588

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抄録
ナスの接ぎ木栽培における台木の品種や性状および台木の葉が穂木の生育に及ぼす影響を明らかにするために, 台木の摘葉などの処理を行った. また, 接ぎ木時の光合成産物の動態を解析して葉の果たす役割について解析を行った.
1.台木品種'赤ナス'および'耐病VF'に接ぎ木した場合の穂木の生育は, '千両2号を台木した場合と比べ, 穂木の乾物重で接ぎ木28日後でおおむね2倍に達した. 一方, 根重については'千両2号'で若干少ない傾向が見られたが, 大きな差ではなかった. 穂木の葉面積でも葉重の変化と同様の傾向を示し, 穂木の生育に及ぼす影響に品種間差が認められた.
2.台木の葉数を変えた場合の穂木の生育に及ぼす影響をみると, 台木葉数の多い区の穂木の葉重•根重および葉面積は大きく, 生育期間の経過とともにその差は拡大した. これらの結果から台木の葉数すなわち葉面積が穂木の生育に大きく関与しているものと考えられる.
3.接ぎ木後28日に台木の葉に14CO2を施与した場合の光合成産物の分配は, 穂木への分配率は35~40%となり, 穂木の茎, 葉および生長点部への分配はほぼ等分になっていた. 台木内では根と茎への分配がほぼ30%前後で台木内の葉への分配は少なかった.また, 穂木の葉についてみると, 穂木と台木にほぼ50%ずつ分配されていることが認められた.
4.各器官の相対的なシンクの強さであるRSSをみると, 穂木の葉に対して根は強いシンクとして機能していないことが認められた. 一方, 穂木の生長点部は台木および穂木の葉に対して強いシンクとなり, 穂木の葉に施与した場合は, 台木の葉と比べて, 著しく高い値を示した. 以上の結果から, 光合成産物は台木および穂木から接ぎ木部分を通過して移動していること, 穂木の生長に対する台木の貢献は, 接ぎ木直後の初期生育時や生長点部に対して比較的高いこと, 穂木も台木の生長に貢献していることが認められた. これらの結果は, 台木の葉数が異なる場合の接ぎ木苗の初期生育に台木の葉の光合成産物が関与していることを示唆するものである.
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