1996 年 65 巻 1 号 p. 27-32
中国の寧夏で栽培されている'巨峰'の果房には,多くの有核果が着粒し,無核小粒の混入はほとんどない.その理由を知るために,開花期の新梢や雌ずいの発育,胚珠や胚のうの完全性,受粉後の雌ずい内での花粉管生長を調査し,岡山で栽培されている'巨峰'と比較した.寧夏の'巨峰'の新梢は比較的勢力が弱く,摘心後の副梢の伸長もわずかであった.開花期の雌ずい内の胚珠の完成率は約60~80%で,日本で一般的に観察される完成率よりも高かった.受粉後の花粉管の生長も比較的良好で,ほとんどの雌ずいで平均1~2個の胚珠内に花粉管が到達した.また,開花期が高温で日照が豊富であること,自根樹であることも有核果の着生にプラスしていると考えられる.