園芸学会雑誌
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ブドウ(品種:'マスカット•ベーリーA')熟枝挿しの発根に伴う内生IAAの変動と芽の作用
河合 義隆
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1996 年 65 巻 1 号 p. 33-39

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抄録

ブドウ'マスカット•ベーリーA'の挿し穂を用いて,発根と内生のIAAの変動に及ぼす摘芽処理の影響を調査した.挿し穂に摘芽処理を行うと発根は完全に抑制された.拡散性IAAは,対照区の挿し穂ではほとんど検出できなかったが,摘芽処理した挿し穂では挿し木後25日にピークがみられた.発根部位における抽出性IAAの量は,挿し木後10から15日にかけて摘芽処理した挿し穂に比べて芽がついている対照区で有意に多かった.この時期に根原基の形成が起こっているものと考えられる.一方,摘芽した挿し穂にオーキシン(IBAとNAA)処理を行うと発根がみられた.この場合の発根に伴う内生のIAAの変化を調べたところ,両者の間では異なっていた.NAAを処理した場合は,挿し木後20日まで抽出性IAAは増加した.IBA処理ではその時期の増加はみられず,摘芽処理をした対照区と同様な変動を示した.これらのことから,IBAとNAAの根の形成における作用機構は異なっているようである.また,挿し穂への摘芽処理による発根の抑制は,発根部位の抽出性IAAのレベルが低下したために生じたものと考えられる.

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