園芸学会雑誌
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In vivoにおけるバナナ(Musa sapientumL.)果実のエチレン誘導クロロフィル分解に関する研究
馬 旭偉池田 妃美子門畑 かおり下川 敬之
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1997 年 65 巻 4 号 p. 851-857

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抄録
バナナ果実におけるクロロフィル含量の変化に及ぼすエチレン処理の影響を明らかにするため,DMF抽出法を用いて果皮から色素を抽出しクロロフィル含量を測定した.その結果,バナナ果実のエチレン誘導クロロフィル分解は,エチレンにより誘導または促進される酵素によりクロロフィルαを優先的に分解し,脱緑を促進することが分かった.また,エチレン誘導クロロフィル分解過程に果色の色彩表現法による脱緑程度を表わす式((L+b)/2+a)とクロロフィル含量との間には非常に高い負の相関関係(r=-0.959,P<0.001)があることから,果色の脱緑を示す指標として,この式はバナナ果実の場合も適切であることが確認された.
In vivoにおけるバナナ果皮のエチレン誘導クロロフィル分解機構を明らかにするため14種類の阻害剤で処理を行い,それにともなう果色の変化を色彩色差計で測定し,上記の式を用いて検討した.その結果,鉄キレート剤による阻害より鉄要求性の酸化酵素の関与と,還元剤あるいはラジカル消去剤により阻害されることからラジカルの関与とが明らかとなった.また,PCMBにより弱く阻害されたことから,バナナ果皮ではウンシュウミカン果実の場合とは異なり,クロロフィラーゼがクロロフィル分解の初期反応にあまり関与していないのと思われた.
これらの結果から,バナナ果皮のエチレン誘導クロロフィル分解においてFe2+(Fe3+),02(02-)の関与する酸化反応が分解系路の一段階であることが示唆された.
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