園芸学会雑誌
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セイヨウナシ葉の諸形質の変異および炭酸ガス拡散抵抗要因と光合成活性との関係
山本 隆儀伊藤 博祐野堀 秀明佐々木 宏
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1997 年 66 巻 1 号 p. 45-57

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抄録
葉の多くの形質, 炭酸ガス拡散抵抗要因, みかけの光合成速度 (Pn) および呼吸要因などを迅速に調査するシステムを考察し, これを用いてセイヨウナシ多数品種の葉の光合成活性の違いの要因解析を行った.
1. 6月中旬から7月上旬までの期間の発育枝 (水挿し枝) を人工光源下で光飽和させ, 携帯用光合成蒸散測定装置 (LI6200) により発育枝の中間部に着生した葉のPn値や種々の拡散抵抗値を, また, LI6200の使用方法を工夫して暗呼吸速度 (Rd) や光呼吸速度(R1) を測定した. また, 試作した計器なども用いて,個葉面積, 葉厚, 比葉重, 葉緑素相対濃度, 葉の表面色, 葉の光学的特性, 葉脈占有率, 葉肉組織の3相分布などの葉の諸形質を調査した.
2. 94品種の葉の諸形質のうち, 変動係数の大きかったものとして葉の表色系L*a*b*色度のa*値,b*値, PPFD透過率, PPFD反射率および個葉面積が, 小さかったものとして葉緑素相対濃度 (SPAD),葉厚および液相割合が認められた.
3.60品種の主成分分析の結果, 葉色もしくはPPFD吸収物質の多少 (第I主成分), 葉肉組織の物性 (第II主成分), 葉上面の反射能 (第III主成分) および葉の水みずしさ (第IV主成分) が推察された.
4. 18品種の光飽和時のみかけの光合成速度の重回帰分析の結果, 寄与率は説明変数に葉肉抵抗 (Rm)を含んだ場合には約90%, 含まなかった場合には約60%であった.
5.相関行列, 曲線回帰分析および重回帰分析の結果を総合するとセイヨウナシにおける光合成活性の高い葉は光沢が少なく, くすんだ緑色で, 表面がやや粗く, 水気の多いことが推察された.
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