抄録
ブドウ藤稔の裂果の様相と果粒形質の関係を他の4倍体品種と比較して調査した.
藤稔は, 'ピオーネ', '巨峰'および'高墨'に比べ裂果発生率が著しく高かった. '藤稔'の裂果は, 小果梗周辺部および花柱痕周辺部に発生した. 成熟前期には,果底部裂果が特に多く発生した. 藤稔では, 他の品種と比較して, ベレゾーン期以降の果皮硬度の低下がより速く, より大きかった.
全品種の果粒で小果梗隣接部の果皮表面に発達したコルク層上に, ベレゾーン期以後亀裂が生じたが, 'ピオーネ', '巨峰'および'高墨'では新たなコルク層の発達により亀裂が癒合した. しかし'藤稔'では, 癒合はみられず, 亀裂は果皮内部に達していた. また他品種に比べ藤稔ではコルク層が薄かった. さらに藤稔の果底部果皮には, 溝状の陥没がみられ, その直下で果肉組織の崩壊が観察された.
また藤稔では, ベレゾーン1週聞後から花柱痕周辺部に同心円状の微細な亀裂が現れ, 成熟後期にかけてしだいに拡大した. 'ピオーネ'ではべレゾーン6週間後に微細な亀裂が生じたが拡大しなかった.