抄録
摘果を行って葉果比15の着果負担をかけた露地植えの'興津早生'ウンシュウミカンの成木に, インドール酢酸水溶液を7月に土壌灌注した. また, 収穫後の7月に夏せん定を行ったハウス植えの'日南一号'ウンシュウミカンの若木を対象として, インドール酢酸,ベンジルアデニン, パクロブトラゾールの水溶液を9月に灌注した. その結果, 灌注処理を行った木では,土壌表層における細根の生育が良好となり, 新梢の花芽分化が優れた. 晩秋における新梢 (茎) の炭水化物含量率をみると, 灌注処理樹は無処理樹より高い数値を示し, 逆に細根については, 前者が後者よりも低い数値を示した. また, 処理樹では新梢 (茎) のC-N率が無処理樹のそれよりも高く, 細根では逆に, 処理樹のC-N率が無処理樹のC-N率よりも低かった. 以上の実験とは別に, 夏せん定を行ったハウス植えの'日南一号'ウンシュウミカン若木に, プロリン水溶液を9月に灌注したところ, 細根の生育は良好となり,新梢の花芽分化も優れた. これらの結果について生理学的考察を加え, 植物生長調節物質やアミノ酸水溶液の灌注処理の実用化について, その可能性を論じた.