園芸学会雑誌
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カキ'西村早生'わい性系統樹における乾物生産と分配の特性
文室 政彦
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1997 年 66 巻 3-4 号 p. 459-465

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抄録

西村早生わい性系統の果実生産力が高い原因を明らかにするために, 29年生および30年生樹を供試し,乾物生産と分配を検討した.
1.強勢系統の地上部新鮮重および地下部新鮮重は, それぞれわい性系統より, 5.9倍, 5.3倍高かった. 材葉比およびT-R率は系統間に差がなかった.
2.単位樹冠占有面積当たり収量は系統間に差がなかったが, 単位葉面積当たりおよび単位幹断面積当たり収量はわい性系統が強勢系統より高かった.
3.着果樹の1樹当たり年間の乾物生産量は, 強勢系統がわい性系統より4.7倍高かった. 単位葉乾物重当たりおよび単位葉面積当たりの乾物生産量は系統間に差異はなかった. わい性系統は強勢系統より果実への乾物分配率が高く, 新梢および旧枝への分配率は低かった.
4.適正着果樹は全摘果樹より, 1樹当たり年間の乾物生産量が強勢系統で1.3倍, わい性系統で2.2倍高く, 単位葉乾物重当たりおよび単位葉面積当たり乾物生産量は強勢系統で1.3倍, わい性系統で1.5倍高かった.
以上の結果, '西村早生'わい性系統の果実生産力が強勢系統より高いのは, 葉の乾物生産力が高いのではなく, 果実への乾物分配率が高いためであることが明らかになった. また, わい性系統は葉量が顕著に少ないために樹体の全乾物生産量が低く, 加えて果実への乾物分配率が高いために新梢および旧枝への乾物分配率が低下し, 樹体をわい化させるものと考えられる.

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