園芸学会雑誌
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汁液分析による園芸作物の栄養診断(第 1 報) : 分析試料調整法の基準化についての検討
池田 英男宇留嶋 美奈大井 慎太郎東井 君枝岡 准慈犬伏 芳樹森山 智子和田 光生
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1998 年 67 巻 3 号 p. 413-419

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抄録
汁液分析法によって栄養診断を行うための試料の調整法について検討し, 以下に述べるような基準化した方法を確立した.1. 分析試料の調整 : トマトなどの場合には小葉を取り除き, 葉柄のみにする.バラなどでは, 分析前に葉を水洗して汚れを取り除く.2. 葉柄あるいは葉を0.5∿1.0cm程度に刻み, 多量要素の分析には, 重量比で試料 : 水=1 : 5以下の比率として, ホモジナイザーにかける.ホモジナイザーにかける時間は, トマト葉柄では30秒間程度でよい.試料に対する水の比率を大きくすると, 抽出はしやすくなるが抽出液中の無機要素濃度が低くなり, 分析器の測定誤差が大きくなりやすい.また, 微量要素の分析には, 試料に対する水の比率をできるだけ小さくしたほうがよい.3. 無色のろ液を得るために, 抽出液に少量の活性炭を加えてよく混和する.このとき, 活性炭の形状, 量は特に問題にはならない.4. 抽出液をろ過し, ろ液を分析する.多量要素のみを分析するならばこのまま分析に供することができるが, 微量要素を分析するさいには, 不溶化を防止するために0.1N程度となるように, ろ液にHClを加える必要がある.なお, HClの添加によって, 原子吸光法ではCaの分析値が実際より高くなるので注意が必要である.5. 汁液中無機要素濃度の表示法 : 分析値を逆算して汁液中濃度とする.例えば試料 : 水=1 : 5で抽出した場合には, 分析値を6倍した値とする.この研究の一部は, 「文部省科学研究費補助金試験研究(B)(1)(No.04556004)によって行われた.また, 汁液分析の基準的方法は, 上記研究の総括者 : 池田英男(大阪府立大学農学部), および分担者 : 篠原温(千葉大学園芸学部), 同 : 糠谷明(静岡大学農学部), 同 : 寺林敏(京都府立大学農学部), 同 : 犬伏芳樹(大塚化学(株)鳴門研究所)の5者の合意によりまとめられたものである.
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