園芸学会雑誌
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ブドウの芽の高温による休眠打破時のACCとグルタチオンの役割
東部 光伸望岡 亮介堀内 昭作尾形 凡生塩崎 修志黒岡 浩
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1998 年 67 巻 6 号 p. 897-901

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抄録

ブドウの芽の休眠打破機構を明らかにするために,高温処理(45℃の温湯に4時間浸漬)による休眠打破過程でのアミノシクロプロパン-1-カルポン酸(ACC)およびグルタチオンの変化,ならびにグルタチオン処理による休眠打破効果について調査した.1.'デラウェア'枝中のACC含量およびエチレン生成量は,高温処理区では処理直後から処理後21日まで対照区を上回っていたが,萌芽後はどちらの値も減少し,対照区を下回った.2.高温処理区および対照区のグルタチオン含量は,処理後3日まで大きな差は認められなかったが,高温処理区の還元型グルタチオン(GSH)含量は処理後3日以降常に対照区よりも高い値を示した.また,高温処理区の酸化型グルタチオン(GSSG)含量は,調査期間中常に対照区よりも低い値で推移した.3.休眠枝にグルタチオン塗布処理を行うと,GSHは明らかに休眠打破効果が認められたが,GSSGでは萌芽率の低下が見られ,休眠打破は抑制された.以上の結果,ブドウの芽の休眠打破には,グルタチオンが酸化型(GSSG)から還元型(GSH)に変化することが重要な役割を担っており,エチレン生成経路で同時に生成されたシアンがGSSGからGSHへの変化を促進するのではないかと推察した.

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