園芸学会雑誌
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異なる収穫熟度のメロン果実における ACC 合成酵素および ACC 酸化酵素遺伝子の発現
塩見 慎次郎山本 幹博中村 怜之輔稲葉 昭次
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1999 年 68 巻 1 号 p. 10-17

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抄録
メロン(Cucumis melo L.)果実は品種によってエチレン生成量に違いがみられ, そのことがメロンの貯蔵性に影響するとされている.このエチレン生成量における相違を生化学的および分子生物学的な面から調べるために, 日本で広く栽培されている, エチレン生成量の比較的多い'アンデス'と, 少ない'アールスフェボリット'を材料として用いた.異なる熟度で収穫した'アールスフェボリット'の果皮, 果肉および胎座のエチレン生合成活性は慣行の収穫熟度においても低いままであり, 果実のエチレン生成量も低かった.一方, 'アンデス'では, 果肉と胎座における1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)合成酵素活性とACC含量および果実のエチレン生成量が慣行収穫熟度で急激に増加した.異なる収穫熟度の果実から果皮, 果肉および胎座別にmRNAを抽出し, ノーザンブロット分析を行った結果, 慣行収穫熟度の'アンデス'の果肉と胎座でACC合成酵素遺伝子の一つであるCMe-ACS1mRNAが蓄積したが, 'アールスフェボリット'ではいずれの収穫熟度でもすべての組織でCMe-ACS1mRNAの蓄積はみられなかった.ACC酸化酵素遺伝子については, ACO1mRNAが慣行収穫熟度の果肉と胎座で両品種ともに蓄積し, ACO2mRNAは両品種で熟度, 組織にかかわらずほぼ一定の発現を示した.プレクライマックテリック段階の果実をエチレン処理すると, 'アンデス'ではCMe-ACS1mRNAの蓄積がわずかながら誘導されたが, 'アールスフェボリット'では誘導されなかった.一方, 傷害処理では両品種でCMe-ACS1の転写が誘導された.ACO1mRNAの蓄積はエチレンおよび傷害処理によって両品種で強く促進された.クライマックテリック段階の'アンデス'果実を, エチレンの作用阻害剤である1-メチルシクロプロペン(MCP)で処理すると, CMe-ACS1, ACO1およびACO2の転写がほぼ完全に阻害された.以上の結果より, 'アンデス'と'アールスフェボリット'におけるエチレン生成能の相違は, 果実成熟中および外生エチレンに反応してCMe-ACS1mRNAが発現するかどうかに起因していることが示唆された.
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