園芸学会雑誌
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リンゴ'つがる'および'あかね'のエチレン生成ならびにエチレン生成に対する生長調節物質, アミノ酸および無機イオンの影響
壽松木 章高橋 敦青葉 幸二増田 哲男樫村 芳記
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1999 年 68 巻 2 号 p. 327-335

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抄録

リンゴ果実におけるエチレン生成の品種間差異を検討するために, 前報(壽松木ら, 1997)に引き続き早生品種の'つがる'および'あかね'の果芯内エチレン濃度(IEC), ACC合成酵素およびACC酸化酵素活性, ACCおよびMACC含量を測定した.さらに, エチレン生成抑制作用の解析を目的に, 葉からの転流物質として考えられる植物生長調節物質, アミノ酸および無機イオン類がリンゴ果実のエチレン生成に及ぼす影響を検討した.1. 'つがる'のIECは8月下旬以降急激に増加し, 樹上果では300μl・l-1, 貯蔵果では800μl・l-1以上に高まった.それに対し, 'あかね'のIECは樹上果ではクライマクテリックの最大時でも5.6μl・l-1, 収穫果では貯蔵中の最大時でも10μl・l-1で, 急激な増加はみられなかった.そのIECパターンの差違は, 両品種ともACC合成酵素活性の変化に依存することが認められた.MACC含量は樹上果, 収穫果とも増加したが, その増加割合は収穫果で大きかった.前報(壽松木ら, 1997)で報告した4品種と合わせた6品種中, 5品種においてエチレン生成系がACC合成酵素の活性に制御されていることが認められた.2. 果肉切片に対する植物生長調節剤処理では, GA3の10, 100ppm処理区で有意差はないが抑制傾向がみられた.アミノ酸処理では, 処理後1時間目のAspの10mMと100mMおよびGlu 100mM区でエチレン生成が有意に抑制された.無機イオン処理では, 100ppm処理では各イオンともエチレン生成を抑制する傾向がみられ, 4∿5時間では対照区より有意差に低下した.しかし, CaおよびNH4-Nの300ppm処理では逆にエチレン生成が促進された.3. 果実全体に対するGA3処理は, 各処理とも処理後2週間目まではエチレン生成を有意に抑制した.その後も, 有意差は一部の処理にしか認められなかったものの抑制傾向は持続した.

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