海藻抽出物がVAM菌の菌糸生長やカラタチ実生苗のVAM形成に及ぼす影響を, Gigaspora ramisporophora SpainというVAM菌を用いて調査を行った.海藻抽出物として, コンブおよびワカメから75%MeOHを用いて抽出したもの(粗抽出物)とともに, これらの粗抽出物からODSカラム使用のフラッシュクロマトグラフィーによって得られた0, 10, 25, 50および100%MeOH溶出物を本実験に供試した.この結果, コンブおよびワカメの粗抽出物処理区におけるVAM菌の菌糸生長は対照(水)区と比較して差異がみられなかったが, コンブの25%MeOH溶出物(0.1および0.3gDW相当量)と50%MeOH溶出物(0.3gDW相当量), ならびにワカメの10%MeOH溶出物(0.3gDW相当量)と25%MeOH溶出物(0.1および0.3gDW相当量)処理区では有意な生長促進効果が認められた.特に, コンブ, ワカメともに, 25%MeOH溶出物(0.3gDW相当量)処理区での促進効果は顕著であった.一方, 土壌へのコンブおよびワカメの粗抽出物ならびに25%MeOH溶出物の処理によって, カラタチ実生苗の菌根感染率は対照区と比べて良好となる傾向が認められた.特にコンブ, ワカメともに, 25%MeOH溶出物(1.0gDW相当量)処理区におけるVAM形成は顕著であった.これらの結果から, コンブおよびワカメ抽出物, 特に25%MeOH溶出物にはVAM菌生長促進物質が存在しており, これがカラタチ根における菌根形成を良好にさせたものと考えられる.
