抄録
アマリリスのりん片挿しにおける仔球形成に及ぼすオーキシン, 抗オーキシンおよび球根底盤部の影響を調査した.オーキシンは2りん片挿しにおける仔球形成を抑制した.1りん片挿しでは仔球形成に先立ちラン科植物に見られるようなPLBが形成されるが, オーキシンはPLBの形成をも抑制した.一方, 抗オーキシンはPLB形成を抑制し, 直接, 仔球形成を促進した.2りん片の底盤部の下半分を切除した場合においても仔球形成能は低下しなかった.底盤部をつけた4りん片を作成し, その内部の2りん片を取り除いた2りん片の仔球形成率は下半分の底盤部を切除した場合に比べて上半分を切除した場合に低かった.1りん片2個を, 2りん片であるかのように寒天もしくは活性炭を含む寒天に挿して培養すると, 底盤部はなくても高い仔球形成率を示し, 活性炭を含む寒天を底盤部の代用とするとより高い仔球形成率を示した.底盤部のみを厚くした1りん片はりん片の厚さと同じ厚さの底盤部をもつ通常の1りん片よりも高い仔球形成率を示した.以上のことから, 1りん片挿しにおいては抗オーキシンが仔球形成を促進すること, ならびに仔球形成には底盤部が重要な働きをしていることが明らかになった.