園芸学会雑誌
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Allium galanthum Kar. et Kir. の細胞質を有するネギ (A. fistulosum L.) の細胞質雄性不稔性に対する稔性回復遺伝子と連鎖するアイソザイムおよび RAPD マーカー
山下 謙一郎有田 寛貴田代 洋丞
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1999 年 68 巻 5 号 p. 954-959

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抄録
筆者らはこれまでの研究で, ネギ属Cepa節野生種Allium galanthum Kar. et Kir.とネギ(A. fistulosum L.)との連続戻交雑後代(A. galanthumが細胞質提供親)に雄性不稔性が生じることを明らかにし, さらに, A. galanthumに由来する稔性回復遺伝子(Rf)を発見した.本研究では, このRfと連鎖する遺伝的マーカーを開発するため, 連続戻交雑後代(B3∿B5)の雄性可稔個体および雄性不稔個体を供試してアイソザイム分析およびRAPD分析を行った.A. galanthumとネギで多型を示した6種類の酵素のアイソザイム分析を行った結果, グルコースリン酸イソメラーゼのアイソザイム遺伝子座Pgi-1について, B3∿B5世代の雄性可稔個体はすべてネギおよびA. galanthumの対立遺伝子の両方を, また, 雄性不稔個体はすべてネギの対立遺伝子のみをもっていた.したがって, A. galanthumの遺伝子座Pgi-1がRf遺伝子座と連鎖していることが明らかとなった.また, A. galanthumとネギで多型を示した27種類のランダムプライマーを用いてRAPD分析を行った結果, プライマーOPE03を用いた場合に, 雄性可稔個体はすべてA. galanthumに特異的な断片(OPE03700)を有し, 雄性不稔個体はすべてこれを有していなかった.したがって, OPE03700がRf遺伝子座と連鎖していることがわかった.本研究で開発されたこれらの2つの遺伝的マーカーは, Rf遺伝子座の遺伝子型の判別に利用できると考えられる.
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