園芸学会雑誌
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ニンニクに含まれるブドウの芽の休眠打破に有効な物質の同定
久保田 尚浩山根 康史鳥生 幸司河津 一儀樋口 哲夫西村 昇二
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1999 年 68 巻 6 号 p. 1111-1117

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抄録
1芽に調整したブドウ'巨峰'の挿し穂を用いて, ニンニクに含まれる休眠打破の有効成分を検討した.ニンニク磨砕物から抽出した精油および市販のガーリックオイルをガスクロマトグラフィで分析したところ, 4つの大きなピークが検出された.しかし, それらの揮発物には最初の2つのピークしか検出されなかった.標品との比較およびGC-MSによる解析の結果, これら4つのピークは硫化ジアリル, 2硫化ジアリル, 3硫化ジアリルおよび4硫化ジアリルと同定された.2硫化ジアリルのピークが最も高く, 次いで3硫化ジアリル, 硫化ジアリルおよび4硫化ジアリルの順であった.硫化ジメチルと2硫化ジメチルのピークは極めて小さかった.挿し穂の切り口に種々のイオウ化合物を塗布処理したところ, 2硫化ジメチルと2硫化ジアリルで発芽が著しく促進された.3硫化ジアリルでは, 発芽は促されたが, 発芽の揃いが劣った.挿し穂を種々のイオウ化合物で気浴処理したところ, 2硫化ジアリルと3硫化ジアリルでは, 処理の濃度や時間に関係なく発芽が促進された.しかし2硫化ジメチルでは, 原液(有効成分, 99%)と10%縣濁液がともに発芽を促したのに対し, 30%縣濁液は著しく抑制した.硫化ジメチルと硫化ジアリルの休眠打破効果は処理の濃度や時間によって変動した.以上のことから, ニンニクに含まれるアリル基(CH2CHCH2)を持ったイオウ化合物, とくに2硫化ジアリルがブドウの芽の休眠打破に有効に作用していると推察された.
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