抄録
'土佐文旦', 'ワシントン'ネーブルオレンジおよびカラタチの幼葉を用いて, 酵素解離法により染色体標本を作製し, (1)ギムザ, (2)キナクリンマスタード(QM), (3)クロモマイシンA3(CMA), (4)4'-6-diamidino-2-phenylindole (DAPI)で順に染色し, 染色体長の測定および各染色法による染色パターンの比較を行なった.QM染色は動原体部分の識別がギムザ染色に比べて容易であった.CMA染色では, 5種類の特徴的な分染パターンが観察された.CMAバンドパターンに基づき, 'ワシントン'ネーブルオレンジの染色体は4つのグループに, カラタチの染色体は3つのグループに, '土佐文旦'の染色体は5つのグループに分けることができた.'ワシントン'ネーブルオレンジおよび'土佐文旦'において, ギムザ染色では染色体数の特定が困難であった, 染色体長の比較的長い核板についても, CMA染色により, 染色体数を18と特定することが可能となった.以上より, 幼葉を用いた染色体標本作製とQM染色法およびCMA染色法は, カンキツ類の染色体構成を明らかにする上で有効であることが認められ, 今後の核型作成の可能性が示された.