2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 248_2
【背景】生体肝移植では肝動脈は末梢での採取となり、複数再建が必要となることがある。レシピエントでの複数の動脈再建はサージカルフィールドが深部であり、また最適なレシピエント再建動脈を認めないこともあり、全ての肝動脈再建が困難な場合がある。【目的】複数の肝動脈再建を必要とする肝グラフトにおいて、バックテーブルでの動脈形成を用いた動脈再建術について報告する。【方法】症例:アラジール症候群の1歳男児で母親の外側区域グラフトを用いて生体肝移植を施行した。肝グラフトにおいてA2(右胃動脈から派生)及びA3+4+胆嚢動脈の2本の肝動脈を認め、それぞれ径が1mmと細径であった。レシピエント全肝摘出の待機時間中にバックテーブルにて手術顕微鏡を用いて、1穴に形成し、レシピエントの右肝動脈とin-situで再建し、経過は良好であった。冷保存時間の延長は認めなかった。【結果】動脈形成術、肝動脈再建術時間は19分と32分で、再建後の肝動脈血流は110ml/minであり、ドッップラーエコーにて血流は良好であった。現在移植後30ヶ月であるが、経過は順調であり、胆管合併症を認めていない。【まとめ】肝動脈複数再建の必要な生体肝移植における手術顕微鏡下バックテーブル動脈形成を用いたレシピエント肝動脈再建は吻合部位を1穴とすることによって、レシピエントにおける肝動脈再建が簡素であり、有効である可能性があった。