抄録
2年生イチジク'桝井ドーフィン'を用い, 13Cをトレーサーとして, 10月中旬に同化された光合成産物の休眠期の貯蔵部位と翌春における転流について調査した.休眠期の部位別13C atom% excessは, 1年枝が最も低く, 2年枝, 挿し穂, 大根, 中根, 細根, 小根の順に高くなった.萌芽25日後の13C atom% excessは, 新梢や新根などで高かった.また, 休眠期と比べて13C atom% excessの低下率の大きい部位は, 1年枝, 2年枝と大根であった.萌芽45日後における, 13C atom% excessの低下率の大きい部位は, 挿し穂と中根であった.新根は萌芽25日後と同様に高い値を維持していた.新梢の茎, 葉, 腋芽部とも, 先端に近いほど13C atom% excessが低かった.これらのことから, 萌芽後25日までの新梢と新根の生長は, それぞれ1, 2年枝と大根に貯蔵されていた養分に依存していると推察された.一方, 萌芽25日後から45日後の新梢あるいは新根の生長は, 挿し穂や中根に貯蔵されていた養分に依存するが, 萌芽後45日頃には新梢先端部の生長については, 貯蔵養分から新しく展開した葉で生産された養分に切り替わっていると考えられた.