抄録
モモ樹に対する施肥濃度が果実の肉質に及ぼす影響を調査するため, 4年生の主幹形'白鳳'樹に, 発芽期から窒素160ppm(H区), 80ppm(M区), 40ppm(L区)を含む総合液肥を与え, 硬核期からは各濃度を半分にした.H区の果実は, 硬熟期に達するのがM区, L区より4∿6日遅れたが, 果肉硬度の低下はM区, L区と同時に始まり, ほぼ同じ速度で進行した.果実のエチレン発生量も各区ともほぼ同様に増加し, 果肉の軟化と平行した.軟化前の果肉の細胞壁構成成分を比較すると, H区では, M区, L区に比べて水溶性ペクチンとセルロース含量が高く, 塩酸可溶性ペクチンとデンプン含量が低かったが, 軟化後はセルロース含量が低かった.また, H区では果肉のK含量が高く, Ca含量が低かった.本実験の結果から, 過剰施肥したモモ果実は, 果肉の無機成分含量にアンバランスがあることや, 糖の蓄積や果皮色の変化などが遅れ, エチレン発生が先行するなどのために, 収穫期の肉質が劣ると考察される.