理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 2
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理学療法基礎系
中等度負荷運動が頚髄損傷者の免疫機能に及ぼす影響
木下 利喜生古澤 一成山中 緑大川 裕行伊藤 倫之幸田 剣芝 寿美子江西 一成神埜 奈美上西 啓裕小池 有美三宅 隆広山本 義男田島 文博
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抄録
【はじめに】
これまでの研究により、運動は免疫機能に影響を与える事が分かっている。高強度負荷運動における白血球数は運動直後に上昇し、運動終了後から徐々に運動前値へと回復していく。またNatural killer cell activity(以下NKCA)は運動直後に上昇し、運動終了後に運動前値より低下(open window)、その後、徐々に運動前値へと回復していく。
我々は前回の研究で、健常者男性12名を対象に中等度負荷とされる最大酸素摂取量60%での上肢運動を行い、NKCAの変化がopen windowの形をとり、白血球数の変化においても高強度負荷運動時と同様な傾向となる結果を得ている。そこで今回、頚髄損傷者を対象に同様の負荷運動を行い、白血球数とNKCAの影響を検討したので報告する。
【対象と方法】
被検者は頚髄損傷者男性9名とし、実験開始24時間前から積極的な運動は禁止した。運動負荷はハンドエルゴメーター(MONARK社 model881)を使用して行った。 まず運動負荷量の設定のため、呼気量・呼気ガス分析計(CosMed社 K4)で、ランプ負荷法により最大酸素摂取量の測定を行い、その60%を本研究の運動強度とした。運動時間は臨床に則してリハ施行1単位に相当する20分間とした。
プロトコールは30分間安静坐位の後、同肢位で最大酸素摂取量の25%負荷・4分間のウォーミングアップに続き、最大酸素摂取量の60%負荷・20分間の運動を行った。採血は運動直前、運動終了直後、運動終了1時間後、運動終了2時間後に実施し、白血球数、NKCAの測定を行った。
測定データは運動前値との比較を行い、統計学的評価は、時間毎に分散分析を行い、有意差があったものに関してRyan,s methodにより多重比較を行った。危険率は0.05未満で有意とした。
【結果】
白血球数は運動直後から上昇し、運動終了2時間後では有意に高い値となった。
また、NKCAは運動直後に上昇し、運動終了1時間後と2時間後でも上昇が続いたが、運動前値と比較して有意差はなかった。
【考察】
今回の結果から、頚髄損傷者の運動負荷による免疫機能への影響は健常者と異なることが明らかになった。open windowが生じなかった理由は、本研究結果からだけでは分からないが、交感神経活動の障害、運動麻痺による活動筋量の低下などによってカテコラミンやインターロイキン6の分泌に何らかの影響が生じた可能性が考えられる。しかし、詳しい機序については不明であり、今後更なる検討が必要である。

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© 2008 日本理学療法士協会
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