園芸学会雑誌
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種々の果樹園における菌根菌 (AM) 活性と栽培管理との関係
/ 水谷 房雄文 斗敬門屋 一臣Kazuomi Kadoya
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2002 年 71 巻 5 号 p. 601-609

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抄録
土壌の耕起, 施肥, 農薬散布が菌根菌(AM)の生存と作用に影響することが知られている.菌根菌の感染, 土壌中の胞子数, 土壌と植物の無機成分含量と栽培管理の間の関係を明らかにするために, 愛媛大学附属農場実験圃場において2000年の5月から10月の生育期にウンシュウミカン, イヨカン, リンゴ, ナシ, キウイフルーツ, カキ, スモモ, クリ, ブドウ園について1ヶ月間隔で調査した.集約的な管理がなされている土壌中の多量元素量は定期的な施肥のために一般的に高く, 葉内の多量無機成分含量は正常な生長と作用をはたす範囲内であった.調査期間中, 無施肥, 無農薬散布のリンゴの菌根菌感染率は年間を通じて高かった.殺菌剤の散布回数が6月に3回と集中したキウイフルーツでは7, 8月の感染率が減少し, 5, 6月の殺菌剤の散布回数が4回のイヨカンでは7月の感染率が低かった.しかも, これらの園には被覆植物がなかった.しかし, モモは5月から8月の間, 5回の殺菌剤を散布したものの, 感染率が高かったのは被覆植物の存在が関係していると思われた.また, 土壌の胞子数も年間の殺菌剤散布回数の多い園では少ない傾向が見られた.被覆植物の多いリンゴ園とモモ園で土壌中の胞子数が多かった.以上のことから, 多肥, 過剰の殺菌剤散布や清耕栽培は果樹の菌根菌の感染や土壌中の胞子数の維持に悪影響を与えていると考えられる.
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