抄録
ネギの抽だいを抑制して新たな6月どり作型を開発するために,中生品種の'全長','浅黄九条'および晩生品種の'長悦'を用いて,トンネル被覆および16時間日長の長日処理が生育,花芽分化および抽だいに及ぼす影響について調べた.トンネル被覆によって,無被覆に比べ最高気温が20~25℃上昇した.処理期間中の生育はトンネル被覆,長日処理,および両者の組み合わせによって促進された.'長悦'においては,高昼温によって脱春化が誘導され,トンネル被覆単独によって抽だいを抑えることができた.'全長'および'浅黄九条'においては,トンネル被覆単独では抽だいを十分に抑えることはできなかったものの,長日処理との組み合わせによって抽だい率が7~24%にまで低下した.長日処理単独の抽だい抑制効果は'全長'および'浅黄九条'では認められなかったが,'長悦'ではその効果は高く,さらにトンネル披覆との組み合わせによって抽だいは皆無となった.以上のことから,脱春化の誘導に日長が強く関与していること,そして'浅黄九条'のような中生品種の6月どり作型の可能性があることが明らかとなった.また'浅黄九条'の場合,最終的な抽だい率と処理中に調査した花芽の検鏡結果とが一致しなかったことから,高温による花芽のアボーションが発生していたことが示唆された.