園芸学会雑誌
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72 巻, 1 号
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  • 片岡 郁雄, 杉山 明正, 別府 賢治
    2003 年 72 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    光感受性の高いブドウ品種'グローコールマン'果実のアントシアニン蓄積における紫外線の関与について,成熟開始期の果実切片を用いて調査した.果実切片を太陽散乱光のもとで各種の資材;ガラス板,ポリオレフォンフィルム,ポリ塩化ビニール,紫外線除去塩化ビニールフィルム,エチレンテトラフルオロエチレンフィルム,ポリカーボネート樹脂板,ガラス繊維強化アクリル板で被覆して,72時間培養した.果皮のアントシアニン含量は,紫外線透過率の低い資材で被覆した場合,大きく減少した.人工的な紫外線照射(ピーク波長352nm)はアントシアニン蓄積を著しく促進させた.UV-A領域(320-400nm)での0.4W・m-2までの紫外線照射によりアントシアニン含量は急増し,2.3W・m-2まで高いレベルで平衡状態を保った.一方,白色光も8.5W・m-2までの照射はアントシアニン含量を緩やかに増加させた.紫外線に4.1W・m-2の白色光を組み合わせて照射した場合,アントシアニン含量はさらに増加した.以上の結果から,ブドウブローコールマン'果実のアントシアニン蓄積には紫外線成分が関わっており,施設の被覆資材の選択には,紫外線透過特性を考慮する必要があることが示された.
  • 藤澤 弘幸, 南 基泰, 緒方 達志, 高原 利雄
    2003 年 72 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    貯蔵中のカンキツ果皮において障害部位や貯蔵環境に応じて特異的に発現しているmRNAを,ジゴキシゲニンを利用したディファレンシャルディスプレイ法を用いて単離した.検出されたmRNAのあるものは,ウイルス感染,エリシター処理,乾燥によって植物組織中で発現が誘導される遺伝子と,またあるものは,オーキシンにより発現が誘導される遺伝子と相同性が認められた.それらのうち3種類について,RT-PCR法により様々な温湿度条件に貯蔵した'清見'果皮における発現を解析したところ,長期貯蔵後に障害発生の顕著な条件において貯蔵初期に強く発現していた.これらの遺伝子発現は,長期貯蔵に不適な貯蔵環境を示す指標として利用できる可能性がある.
  • / 福島 正幸, 岩堀 修一, Shuichi Iwahori
    2003 年 72 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ニュージーランドで育成した北部ハイブッシュブルーベリーの3品種'Nui'.Turu'および'Reka'について,肥料形態と施肥方法の異なる条件下での栄養生長を比較した.無肥料区を対照区とし,市販の化成肥料を施肥する固形肥料区,植物がすぐ吸収できる状態に希釈した培養液を点滴方式で毎日灌水する液肥区の3処理を設けた.処理は2001年5月中旬から2001年9月中旬まで行い,処理終了後に植物を部位別に解体して生長量を測定した.乾物重は3品種の全てについて,液肥区が最も優れ,固形肥料区の2~3倍の生長量になった.対照区の生長は固形肥料区より少なかった.'Nui'は3処理区ともに乾物重が少なく,液肥区において有意差の見られる乾物重の増加は主に地上部であった.根系には処理による差異がなかった.'Reka'は最も生長が早く,液肥区の根系は固形肥料区の2,9倍になった.'Puru'.の乾物重は中間であった.ブルーベリーの商業的栽培は,養液栽培方法により増収の可能性があると認められた.
  • 山崎 篤, 田中 和夫, 中島 規子
    2003 年 72 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ネギの抽だいを抑制して新たな6月どり作型を開発するために,中生品種の'全長','浅黄九条'および晩生品種の'長悦'を用いて,トンネル被覆および16時間日長の長日処理が生育,花芽分化および抽だいに及ぼす影響について調べた.トンネル被覆によって,無被覆に比べ最高気温が20~25℃上昇した.処理期間中の生育はトンネル被覆,長日処理,および両者の組み合わせによって促進された.'長悦'においては,高昼温によって脱春化が誘導され,トンネル被覆単独によって抽だいを抑えることができた.'全長'および'浅黄九条'においては,トンネル被覆単独では抽だいを十分に抑えることはできなかったものの,長日処理との組み合わせによって抽だい率が7~24%にまで低下した.長日処理単独の抽だい抑制効果は'全長'および'浅黄九条'では認められなかったが,'長悦'ではその効果は高く,さらにトンネル披覆との組み合わせによって抽だいは皆無となった.以上のことから,脱春化の誘導に日長が強く関与していること,そして'浅黄九条'のような中生品種の6月どり作型の可能性があることが明らかとなった.また'浅黄九条'の場合,最終的な抽だい率と処理中に調査した花芽の検鏡結果とが一致しなかったことから,高温による花芽のアボーションが発生していたことが示唆された.
  • 李 温裕, 杉山 信男, 小菅 秀一
    2003 年 72 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    結球性レタスを25/20℃あるいは20/15℃に調節した自然光ガラス室内で栽培し,茎の生長と花成の関連を調査した.25/20℃では播種後28日目, 20/15℃では39日目に花成の最初の兆候である生長点の肥厚が認められた.25/20℃では結球せずに抽たいしたが,20/15℃では結球した.栽培温度にかかわらず,茎の長さは指数的に増加した.茎の長さと径の関係を雨対数グラフにプロットすると,花成の兆候が認められるまでは,25/20℃,20/15℃とも直線となったが,その後は直線からのかい離が認められた.茎の長さと重さ,茎乾物重と葉乾物重との関係払同様に花成の兆候が認められるまでは直線に当てはまった.これらの結果から,球の形成に関係なく,栄養生長茎と花茎とはその形によって識別することが可能であることが明らかになった.
  • 李 智軍, 名田 和義, 橘 昌司
    2003 年 72 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    人工気象室(気温25℃,日長12時間,光強度300μmol・m-2・s-1)で育成した第3葉齢時のキュウリ苗を用いて,光合成器官の高温ストレス抵抗性に及ぼすABA葉面散布の影響を調べた.1mM ABA散布後1,3,5日目の葉を暗黒下・45℃で10分間加温し,その前後の第2葉の光合成活性(光下・25℃における酸素発生量)とクロロフィル蛍光収率(Fv/Fm)を測定した.ABA無処理葉では,光合成活性,Fv/Fmともに,高温処理によって顕著に低下した.しかし,ABA処理葉ではいずれのパラメータも高温による低下程度が無処蓬葉に比べて小さかった.このABAの効果はABA処理後の時間経過につれて減少した.そこでABA処理葉と無処理葉から調製したチラコイドを暗黒下・40℃で5分間加温し,その間の光化学系(PS)IIおよびIの電子伝達活性の変化を測定した.ABA処理葉のチラコイドは無処理葉のそれに比べて熱による電子伝達活性の低下程度が小さかったが,いずれもPS II反応中心は熱障害を受けなかった.ABA処理葉のチラコイドは熱処理期間中のマンガンの脱離が少なく,葉のABA処理によってPS IIの酸素発生部位の熱安定性が高まったと考えられた.チラコイドにABAを添加しても電子伝達系の熱安定性は高まらなかった.これらの結果は,葉のABA処理による光合成の高温耐性の高まりには,何らかの機作による酸素発生装置の熱安定性の増大が関係していることを示唆する.しかし,単離チラコイドの熱安定性に対する葉へのABA処理の影響は,インタクト葉の光合成の高温耐性に対するそれに比べて小さかったことから,ABAは酸素発生部位以外の光合成器官の熱安定性にも関与している可能性がある.
  • 菊地 郁, 金濱 耕基, 金山 喜則
    2003 年 72 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    デルフィニウムのがく片はエチレンの働きによって脱離するが,エチレン作用阻害剤を用いることでその脱離を防ぐことができる.しかしエチレンの作用を抑制しても,かく片が萎れ,雌ずいが発達して切り花品質が低下する.従って,かく片の萎れと雌ずいの発達にはエチレン以外の要因が考えられ,本研究では糖代謝に着目して検討を行った.STSで処理したデルフィニウム小花において,採花4日から9日後の間にがく片は顕著に萎れ,これには新鮮重の低下が伴った.またこの間,雌ずいは発達し続けた.かく片の可溶性糖を小花当たりでみた場合,採花4日から9日後にかけて水分音量と同様に1/2程度に減少していた.従って,可溶性糖の減少によるがく片の浸透圧の低下が萎れを引き起こした可能性が考えられた.デルフィニウムの転流糖はスクロースとマンニトールであると考えられているので,シンクにおいてこれらを代謝するスクロース合成酵素(SS),酸性インベルターゼおよびマンニトール脱水素酵素(MDH)の活性の小花の品質低下に伴う変動を調べた.その結果がく片においては,細胞壁インベルターゼ活性と,PCMBS感受性のスクロース吸収が萎れに伴って極めて低いレベルに低下した.また花柄から14C-スクロースを吸収させ,小花の品質低下に伴うがく片と雌ずいへの分配率の変動を調べた結果14C-スクロースのがく片への分配率は,萎れの最も著しい採花4日から9日後の間に71%から17%へと減少した.この変動は細胞壁インベルターゼ活性の変動と良く似ていた.よってかく片では,細胞壁インベルターゼ活性の低下によって引き起こされるシンク能の低下が,可溶性糖の減少による浸透圧の低下と萎れの原因である可能性が示された.また,シンクにおける重要な酵素として知られているSS活性も萎れに伴う低下を示し,14Cスクロースのがく片への分配率の低下とも対応していたため,萎れとの関連が示唆された.一方雌ずいにおいては,MDH活性が雌ずいの発達に伴って上昇し,細胞壁インベルターゼとSSの活性が採花4日後以降高い値を保った.
  • ブサル ラム チャンドラ, 水谷 房雄, ルット キプコリオニ ラバン
    2003 年 72 巻 1 号 p. 43-45
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    異なる樹齢のカラタチから得た当年生枝を挿し穂としてその発根能力を調査した.全ての挿し穂は2001年6月に採取した.発根能力は樹齢によって異なった.挿し木後45日目に調査したところ,1,2生樹から採取した当年枝の発根率は100%だったのに対し,15,25年生樹からの当年枝は0%だった.3年生から5年生の樹より採取した当年枝の発根率は樹齢が大きくなるにつれて発根率が減少した.発根数は発根率が高いほど多かった.また,別の実験で'青島温州'の成木から採取した当年枝を2年生カラタチ実生台木に接ぎ木をして1年間養成したあと,台木の部分をつけて挿し穂を取り,挿し木をしたところ,全てカラタチの台木の部分から発根した.
  • 勝川 健三, 稲本 勝彦, 土井 元章, 今西 英雄
    2003 年 72 巻 1 号 p. 46-48
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    早期促成栽培におけるチューリップ13品種のりん茎の発根に及ぼす栽培温度の影響を水耕栽培によって検討した.品種によって発根量が大きく異なること,発根の最適温度が品種によって異なることが観察された,また,温度に対する発根量の変化は,水耕と日向土を用いた固形培地栽培の両方において同様であった.本実験の結果は,早期促成栽培において植付け時期の地温に応じて,適当な品種を選択することが重要であることを示している.
  • 崔 世茂, 清水 誠, 藤井 清永, 原田 健一, 新居 直祐
    2003 年 72 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    The effects of 0, 50, 150, 250 and 500 mM NaCl for a short duration on the accumulation of Na, Cl and proline betaine in the roots, stems and leaves of young Poncirus trifoliata seedlings were investigated. The degradation of nuclei in the cells of the apical meristem of the root was observed by fluorescence microscopy after the nuclei were stained with 4'-6-dlamidino-2-phenylindole (DAPI). With increasing concentrations of NaCl, the Na and Cl content in the leaves, stems and roots increased while tree growth was reduced proportionately. The leaves accumulated more Na and Cl than did the roots, resulting in severe injuries, more so in the former than in the latter, with increasing NaCl concentrations. Proline betaine accumulated in the roots at 250 and 500 mM NaCl, but it did not increase in the leaves at any treatment. Salt stress also induced several anatomical changes in the apical meristem from the root tip to 2-3 mm, such as vacuolation in the cortical cells, abscission of root cap cells, and nuclear degradation.
  • 佐藤 達雄, 瀧口 武, 松浦 京子, 成松 次郎, 水野 信義
    2003 年 72 巻 1 号 p. 56-63
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    The effects of high temperature treatment by non-ventilation of greenhouse on fruit yield and the incidence of diseases and insects in summer cucumber production were evaluated against constant ventilation (control). Fruit yield for 5 cultivars of summer cucumber was increased by setting the ventilation temperature at 45°C from 4:30 until 10:30. Diseases and insects were effectively suppressed by high temperature. Non-ventilation should be done during the lunch break during 11:30-13:20 in consideration of the worker's comfort. Most diseases and insects (except mites) could be controlled. However, with daily high-temperature treatment the number of dead or malformed fruits increased. Until the beginning of harvest, frequent non-ventilation treatment may exterminate diseases and insects and increase the number of fruiting nodes. Thereafter, frequency of the treatment should be reduced to ensure fruit set and growth.
  • 森 利樹, 北村 八祥
    2003 年 72 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    The resistant F1 progenies of strawberry (Fragarla × ananassa Duch.) that were inoculated with anthracnose during the young seedling stage were compared with non-inoculated seedlings for fruit quality and earliness. The progenies were derived from the cross between susceptible 'Nyoho' and resistant 'Hokowase'. The inoculated and non-inoculated seedlings had similar mean values and variations in the fresh weight and firmness of fruits, Brix values, acidity, soluble solid/acid ratios, color of fruit juice, L*, a* and b* values of fruit skin color, and a similar distribution in the dates of flower-bud emergence. The results indicate that there are no correlations between resistance to anthracnose and a) traits of fruit quality and b) earliness of strawberry. Thus, screening for anthracnose resistance in the young seedlings may not lead to discarding germplasm with high fruit quality and an early flowering trait.
  • 山崎 博子, 濱野 惠, 大和 陽一, 三浦 周行
    2003 年 72 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    Bulbing response of Allium × wakegi Araki cv. Kiharabansei No.1 to temperature prior to bulb formation was investigated. The plants exposed to 5°C for 35 days were grown at 20°C under photoperiods ranging from 11 to 14 hrs. The control plants were kept above 15°C before the photoperiodic treatment. Regardless of the exposure to low temperature, the plants did not form bulbs under 11- and 12-hr photoperiods, whereas they did under a 14-hr photoperiod. Under 13- and 14-hr photoperiods, the plants exposed to low temperature had higher bulbing ratios (the maximum diameter of basal leaf sheath/the minimum neck diameter) and higher percentages of tillers with bulb scales (bladeless swollen leaves) than had the control plants. Low temperature exposure did not induce bulb formation of A. × wakegi, but shortened the critical photoperiod for bulb formation from 14 hrs to 13 hrs. When bulbs were stored between 1 and 25°C for 50 days and grown at 20°C under a 13-hr photoperiod, storage at or below 15°C promoted the formation of new bulbs. Storage at 10°C was more effective than that at 15°C, but below 10°C, it exerted no additional effect. When bulbs were stored at 5°C between 0 and 84 days and grown at 20°C under a 13-hr photoperiod, the formation of new bulbs was promoted as the cold storage period was extended. The promotive effect of low temperature on bulb formation was weakened by subsequent exposure to 25-35°C.
  • 今川 順一, 濱崎 貞弘, 今堀 義洋, 上田 悦範
    2003 年 72 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 2003/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    A method to remove astringency and yet retard fruit softening during storage in early ripening Japanese persimmon 'Tonewase' grown in a plastic greenhouse was developed. This method which involved treatment of fruits for 10 hr at 35°C with a mixture of 50% CO2 and 1-1.5 ml of ethanol per kg of fresh fruit proved to be more effective to reduce softened fruit than the prevailing treatment using 95-100% CO2 for 16 hr at 25°C. With this new method, ethylene production by the treated fruit peaked at 0.31 μl·kg-1·hr-1 immediately after the end of the treatment and decreased quickly afterwards. This response demonstrates that the burst of ethylene did not stimulate fruit softening at 35°C.
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