園芸学会雑誌
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ニラとラッキョウに含まれるブドウの芽の休眠打破に有効な物質の同定
久保田 尚浩鳥生 幸司山根 康史河津 一儀樋口 哲夫西村 昇二
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2003 年 72 巻 4 号 p. 268-274

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抄録
アリウム属植物のニラとラッキョウについて,ブドウの芽の休眠打破に有効な成分を検討した.ニラとラッキョウの揮発性物質をガスクロマトグラフィで分析したところ,いずれにもいくつかのピークが検出されたが,大きなピークはニラでは2つ,ラッキョウでは1つであった.標品との保持時間の比較およびGC-MSによる解析の結果,ニラの2つのピークはメチルメルカプタン(CH3SH)とアリルメルカプタン(CH2=CHCH2SH),ラッキョウのピークは2硫化ジメチル(CH3SSCH3)であった.これらの化合物およびこれらに関連する化合物について,休眠期(11月下旬,12月下旬あるいは1月中旬)の'巨蜂'の挿し穂を気浴処理し,休眠打破効果を調査した.メチルメルカプタンは12月下旬,1月中旬処理ともに発芽を促進したが,発芽の揃いは低濃度で優れた.アリルメルカプタンは,12月下旬処理では発芽を促したが,1月中旬処理では逆に抑制した.2硫化ジメチルの効果は処理の濃度,時期および時間によって異なった.すなわち,11月処理の場合,99%では24時間処理で発芽が著しく促進されたのに対し,12時間処理の効果は小さく,また30%では12時間,24時間処理ともに全く発芽しなかった.12月に10および75%の2硫化ジメチルで24時間気浴処理した場合,10%では発芽が促進されたが,75%では抑制された.以上より,ブドウの芽の休眠打破に有効なニラおよびラッキョウに含まれる揮発性物質は,それぞれメチルメルカプタンとアリルメルカプタンおよび2硫化ジメチルと推察されたが,休眠打破に有効な処理の時間や濃度については休眠の深さとの関連でさらに検討する必要があると思われた.
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