水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
Print ISSN : 0915-1389
ISSN-L : 0915-1389
原著論文
東アジアにおける降水d-excess季節変動に関する再考察
芳村 圭一柳 錦平
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 22 巻 4 号 p. 262-276

詳細
抄録

本研究では,過去の解釈の修正を念頭に置き,東アジア域での降水d-excessが冬季において高くなるメカニズムを考察した.気象庁のアメダス再統計値・NCEP/DOEの広域大気場の再解析データ・同位体大循環モデルを用いた解析から,日本海・太平洋北西部・黄海・東シナ海などを含む東アジアに隣接する海洋一帯(「東アジア海洋域」と定義)において,洋上大気の温度が海面水温に対して著しく低くなるため,実効相対湿度(海面水温で基準化した相対湿度)が下がる.そのため,大きな動的同位体分別によって高いd-excessを持つ水蒸気が大量に大気へ供給され,日本域・朝鮮半島・中国東部において,高いd-excessをもった降水がもたらされていることがわかった.冬季における太平洋起源の水蒸気のd-excessは日本海起源のそれと同様に高いことから,過去の解釈では可能とされていた日本における降水d-excessから水蒸気の起源が日本海か太平洋かを推定することは困難である.

著者関連情報
© 2009 Japan Society of Hydrology and Water Resources
次の記事
feedback
Top