名古屋開府以来地域の象徴である堀川は,自己流量を持たない人工河川であり,その水質改善は都市化と産業化が著しい大正期からの課題である.種々の方法のうち,流量増加による希釈は最も長年取り組まれ,その水質改善の効果は2007年から3年間の木曽川からの導水とその後2年間の観察でも確認され,その成果は市民レベルで今も引き継がれている.本稿では,この「社会実験」時の流量0.4 m3/sを目安としつつ更なる水質改善のため,農業水利施設を介して流量を確保する方法を,地域資源を活用した試案として検討した.木曽川から堀川に至る流れは,木津用水・新木津用水と連続性を保ちつつ古くから利用されており,また一部舟運利用の歴史もある.この試案は,流域治水における関係者の「協働」の実践例となりうる可能性を内包しつつも,様々な課題を伴うことも分かった.