水文・水資源学会誌
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巻頭言
原著論文
  • 小島 永裕, 谷 誠, 正岡 直也
    2025 年38 巻4 号 p. 231-248
    発行日: 2025/11/05
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル 認証あり

     山地流域の洪水流出機構解明のため,水文データの蓄積がある森林小流域の一斜面において,土壌水分と湧水流出量の観測を実施した.降雨開始後の土壌層の湿潤化過程では,土壌水分分布への土壌層内の空間的不均質性の影響が大きく表れた.しかし,土壌層底面まで湿潤化した領域では,降雨の時間変動が圧力水頭の伝播を通じて土壌層の深部まで速やかに伝達される性質が一様に見られ,これが流出寄与域となって洪水流出強度の時間変動を生み出すと考えられた.降雨終了後の減衰過程では,流出強度の減少に対応して,圧力水頭が下降し,体積含水率が減少した.そこで,三者の単調減少の対応関係を基に,減衰過程での湧水の総流出量と流出寄与域の土壌水分減少量との関係を調べた結果,土壌水分量の減少が湧水の流出をもたらす主要因であると推察された.また,本研究で評価対象とした降雨イベントと先行研究で観測された総降雨量が同程度で,かつ降雨前の流出強度がより大きかった別の降雨イベントとを比較したところ,後者の流出強度の減衰が前者より緩やかであった.この結果はイベント前の土壌の乾湿状態の差に基づく流出寄与域の拡大傾向の相違によって合理的に説明された.

  • 濱口 泰征, 佐野 太一, 木口 雅司, 乃田 啓吾, 中村 晋一郎, 大津山 堅介, 沖 大幹
    2025 年38 巻4 号 p. 249-265
    発行日: 2025/11/05
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル 認証あり

     気候変動による極端な降水現象の増加により,日本各地で洪水が頻発している.先行研究は,洪水が地域の人口減少を加速させ地域経済に負の影響を与えると示唆しているが,それらの多くがケーススタディであり水害と人口減少の一般的な関係は論じられていない.本研究では,洪水によって被害を受けた全国41地域を対象として,1)洪水発生後の人口流出数の推計,2)その人口流出を加速させる要因,3)洪水発生域での人口動態の変化を明らかにした.その結果,家屋の被害度が人々の転出意思に影響を与えており,高齢者はその地に留まる一方で農家は転出しやすく,その被害を受けた人々の0〜20%が毎年転出することが明らかになった.本研究が過疎化に苦しむ地方自治体に,水害後のさらなる人口減少に対処するための有用な知見をもたらすことが期待される.

  • 小椋 崇弘, 陸 旻皎
    2025 年38 巻4 号 p. 266-278
    発行日: 2025/11/05
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,植物の根の分布を考慮した蒸散モデルに加え,基底流出モデルと地下水ピエゾ流動モデルを新たに開発し,地下水のピエゾ流動が流域水循環に及ぼす影響について調べた.いずれのモデルも蒸散モデルと同様に土壌水分欠損量(SMD)の概念に基づいており,前者は基底流出の発生を表現することができ,後者は流域内部の地下水ピエゾ流動を考慮して流域各部のSMDの増減を表現することができる.実験流域である森林総合研究所竜ノ口山森林理水試験地北谷を上流域と下流域とに二等分してモデルを適用した結果,無降雨期に基底流量が維持される過程を表現することができた.さらに,変動流出寄与域の形成は,地下水ピエゾ流動による上下流間のSMDの差が形成されるプロセスとして説明できる可能性が示された.

研究ノート
  • 神鳥 徹也, 松山 洋, 大森 聡一
    2025 年38 巻4 号 p. 279-289
    発行日: 2025/11/05
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル 認証あり

     富士山の南東麓に近接して位置する小浜池と柿田川,および箱根外輪山西麓に位置する谷田押切自噴井戸において,2024年5~11月の間,晴天時と大雨後に水質調査を実施した.測定項目は気温,水温,pH,RpH,電気伝導度,および硝酸態窒素,シリカ,硫酸イオン,塩化物イオンの濃度である.小浜池と柿田川では富士山系の地下水が湧出しているが,箱根外輪山や愛鷹山系の地下水の流入が示唆されてきた.しかしながら,継続的に水質調査を行なった研究はこれまでになかった.

     水温と電気伝導度は,小浜池の方が柿田川よりも常に高く,両者の差は統計的に有意であった(p < 0.05).小浜池と柿田川では,それぞれ,晴天時と大雨後の水質に統計的に有意な差はなかった.しかしながら,大雨後の硫酸イオン濃度は,小浜池では低下,柿田川では上昇し,両者の差は統計的に有意であった(p < 0.05).

解説
  • 花崎 直太, 岡田 将誌, 伊藤 昭彦, 佐藤 雄亮, PARK Chae Yeon, 塩竈 秀夫, 林 未知也, 筒井 純一, 杉山 昌広 ...
    2025 年38 巻4 号 p. 290-300
    発行日: 2025/11/05
    公開日: 2025/12/13
    [早期公開] 公開日: 2025/09/19
    ジャーナル オープンアクセス

     ISIMIP(Inter-Sectoral Impact Model Intercomparison Project)は地球規模の気候変動に関する影響モデルの分野横断的な相互比較のための国際プロジェクトである.ISIMIPを通じて,多数の分野の複数の影響モデルが最新の気候・社会経済シナリオを共通に利用することで,不確実性の幅を含む大規模なマルチモデルアンサンブル予測情報が構築され,気候変動における研究や政策立案等に役立てられている.本稿では,ISIMIP全体の特徴と経過,分野別の具体的な活動と成果について解説するとともに,最新の国際的動向を踏まえた日本の研究者に対する示唆を述べる.

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