水文・水資源学会誌
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原著論文
黒部川流域の水循環に伴う 窒素循環の機能解明
早瀬 吉雄瀧本 裕士
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2013 年 26 巻 6 号 p. 285-294

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抄録

 立山連峰は,峰が高いため降水の汚染沈着量が少ない.山岳の積雪は,融雪初期に汚染物質を流去させて低濃度のざらめ雪となる.森林の養分吸収によって,黒部川のNO3-Nは,夏にかけて0.2 mg/Lまで低下する.森林の窒素吸収量は,年間収支から平均4.6 kg/ha/yである.黒部川の水は,扇央部で伏流し,扇端部で自噴,海底で湧出する.海底湧水による窒素負荷量は,河川水の負荷量の30 %となる.平野部・丘陵地の融雪水,海底の湧出水と海面の降水は,沿岸海域に栄養塩の補給を行い,3月に植物プランクトンのブルームを起こす.窒素循環は,流域の多様な生態系を培養している.

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© 2013 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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