水文・水資源学会誌
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原著論文
フィリピンにおける治水技術に関する能力開発上の課題と解決方策
澤 秀樹
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2016 年 29 巻 6 号 p. 372-379

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抄録

 フィリピンにおける治水分野の技術協力プロジェクトにおいて生じた問題点とその解決を通じて得られた知見を踏まえ,開発途上国における今後の治水分野の技術協力プロジェクトに対する改善の提言を行う.パイロット事業として整備した石積み水制の施工時に,材料となる玉石の寸法について,設計書で玉石の直径を平均45 cmと示した.日本側技術者は直径が概ね45 cmの玉石が使われるものと想定していたが,フィリピン側の工事発注する役所の技術者も,施工会社の技術者も,平均値が45 cm以上となるのであれば直径が10 cmの石から1 mの巨石まで幅広い範囲の大きさの石を使っても良いと認識しており,水制の真ん中に巨石を配置して,周囲を小さな石で整形するという事態が生じた.こうした認識の違いはなぜ生じるのか,違いを生じさせないことは可能か,といった観点から改善方策について提言を行う.

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© 2016 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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